*

「鉄旅日記」2021年夏 初日(東京-上田)その2 ‐湯檜曽、水上、越後湯沢、六日町(上越線/北越急行ほくほく線) 【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】

公開日: : 最終更新日:2025/06/13 旅話, 旅話 2021年

鉄旅日記2021年7月10日・・・湯檜曽駅、水上駅、越後湯沢駅、六日町駅(上越線/北越急行ほくほく線)

8:47 湯檜曽(ゆびそ)駅(上越線 群馬県)
トンネル内の下りホームは冷気に包まれていた。寒い。まさに寒い。

水上側には深山が覗き、土合側には青信号が光る。

上りホーム、出口へとつながる長い通路もまた氷室のよう。

外に出て歩き始めれば蝉の第一声。梅雨に閉じ込められていたけど、上州でひと足早い夏を感じた。

下りホームに未練がある。水上側に向かって歩きだすと足元にひとつまみの黒い影。見るとそれはクワガタムシで、緩慢に手足を動かしている。やり過ごしてホームの端を見定めて戻ると、まだ同じ場所で緩慢な動きを繰り返していた。

下りホームを去る時、何かが鳴いた。注意を払わなかったが、2、3歩進むと気になって、また水上側に目を向けた。

あのクワガタムシが鳴いたのかと思ったんだ。

上りホームは地上にあり、階段を上がるとほどなくして列車の到着。

9:43 水上(みなかみ)駅(上越線 群馬県)
湯檜曽で1時間は過ごせず、8:47の上りで水上に戻る。長いトンネルを抜けてきた列車の窓は水滴で曇っていた。

2009年に歩いた道はすべてが廃れていた。駅前を除いて通りに面した店もホテルも閉まり、切ない風景にこの12年の中に過ぎた時代を想う。

川辺の遊歩道も歩く人はまれなのだろう。夏草に覆われた道は整備の対照から外れて荒廃に任せている。

恋人と初めて一夜を共にした思い出のホテルが対岸に見える。それを写す腕にトンボが休んだ。そんなトンボを愛でた。

ビールが飲みたくて駅前の土産物屋へ。でも置いてない。だけどご親切に酒屋の場所を教えていただいた。

そこへ行くとSL広場があり、向かいの酒屋では温厚篤実を人の姿で現したようなご主人が座っておられた。

昨夜までの雨は関東のどこでも上がったようで、互いの経験から「今日は暑くなりますね」と言葉を交わした。

つまみが欲しくて先の土産物屋に再度寄った。購入したのは下仁田ネギ味のポテチ。健康のために控えていたが、それしかなければ他に礼を伝える術を思いつけない。

10:28 越後湯沢(えちごゆざわ)駅(上越新幹線/上越線/北越急行ほくほく線 新潟県)
12分の停車。

ボックス席では酒が必要。補充のために改札を抜ける。

様々な思い出が残る越後湯沢。最初の恋人との最後の幸せな朝があり、共にスキーで訪れた人々はいちいち思い出せない。

ひとりではいなかった場所。

そしてそれからは普段過ごしている東京の様々な町のように、いつも越後湯沢を通りすぎる。

そんな遠くの町もまた、この駅の他にはすぐには思いつかない。

10:55 六日町(むいかまち)駅(上越線/北越急行ほくほく線 新潟県)

関東の晴れは上越トンネルの先へは伝わらず、予報通りの曇り空。雲は湧き、店頭の幟が風にはためいている。

北越急行の始発駅は六日町。車寅次郎もかつてはここで降りている。

北陸新幹線開通前は、福井までの直通特急を走らせていたこの線区も、今じゃ時代に埋もれそうに思うが、そんな余所者の感傷に動じることなく、ほくほく線は専用高架線を高速で移動している。

関連記事

「鉄旅日記」2013年夏 4日目(隼人-岩国)その1-隼人、鹿児島、鹿児島中央、上伊集院、薩摩松元、川内、出水、新水俣、新八代(日豊本線、鹿児島本線、肥薩おれんじ鉄道) 【青春18きっぷで、鹿児島県志布志へ】

鉄旅日記2013年8月13日その1・・・隼人駅、鹿児島駅、鹿児島中央駅、上伊集院駅、薩摩松元駅、川内

記事を読む

「鉄旅日記」2022年新春 初日(東京-湯瀬温泉)その2 ‐竜田、原ノ町、鹿島、仙台、小牛田、一ノ関(常磐線/東北本線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月8日・・・竜田駅、原ノ町駅、鹿島駅、仙台駅、小牛田駅、一ノ関駅(常磐線/東北

記事を読む

2018年秋 最終日(松戸-五井-大原-安房鴨川-松戸)その3-安房鴨川、江見、君津、千葉、西船橋(内房線/総武本線) 【サンキューちばフリーパスでめぐる上総下総安房旅】

鉄旅日記2018年9月23日・・・安房鴨川駅、江見駅、君津駅、千葉駅、西船橋駅(外房線/内房線/総武

記事を読む

「鉄旅日記」2013年春 初日(東京-和歌山)その1-米原、弁天町、大正、芦原橋、今宮、杉本町、堺市、東羽衣、鳳(東海道本線、大阪環状線、阪和線、東羽衣支線) 【爆弾低気圧襲来日、青春18きっぷで西へ】

鉄旅日記2013年4月7日その1・・・米原駅、弁天町駅、大正駅、芦原橋駅、今宮駅、杉本町駅、堺市駅、

記事を読む

「鉄旅日記」2019年年始 初日(東京-一ノ関)その2-新津、新発田、坂町、小国、今泉、西米沢~上杉家御廟~上杉神社~南米沢(信越本線/羽越本線/米坂線) 【雪が見たくて北へ向かいました。そして初めて仙台空港線に乗ったのでございます。】

鉄旅日記2019年1月5日・・・新津駅、新発田駅、坂町駅、小国駅、今泉駅、西米沢駅、南米沢駅(信越本

記事を読む

「鉄旅日記」2020年初秋 初日(東京-高松)その1 ‐金町、東京、米原、坂田(常磐線/東海道新幹線/北陸本線) 【時空の友を訪ねて讃州高松へ。金比羅さん、瀬戸大橋、大歩危、小歩危などを友とめぐり、義仲寺に寄り、直島に渡り、水島臨海鉄道にも乗った4日間の記録でございます。】

鉄旅日記2020年9月19日・・・金町駅、東京駅、米原駅、坂田駅(常磐線/東海道新幹線/北陸本線)

記事を読む

「鉄旅日記」2019年弥生Part.2 その3-常陸太田、東海、大甕、南中郷、石岡(水郡線常陸太田支線/常磐線) 【青春18きっぷ常磐旅。この当時、常磐線は富岡止まりでございます。そしてこの季節、臨時駅の偕楽園駅に列車が止まります。】

鉄旅日記2019年3月10日・・・常陸太田駅、東海駅、大甕駅、南中郷駅、石岡駅(水郡線常陸太田支線/

記事を読む

「鉄旅日記」2020年弥生 初日(東京-高山)その5‐飛騨金山、下呂、禅昌寺、飛騨萩原、上呂(高山本線) 【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】

鉄旅日記2020年3月20日・・・飛騨金山駅、下呂駅、禅昌寺駅、飛騨萩原駅、上呂駅(高山本線) 1

記事を読む

「鉄旅日記」2009年初夏 【上信越ひとり旅】最終日(長岡-東京)-長岡、東三条、吉田、新潟、新津、会津若松、郡山、磐城石川、磐城塙、玉川村、常陸大宮、金町(信越本線/弥彦線/越後線/磐越西線/水郡線/常磐線)

鉄旅日記2009年7月20日・・・長岡駅、東三条駅、吉田駅、新潟駅、新津駅、会津若松駅、郡山駅、磐城

記事を読む

「鉄旅日記」2021年春 初日(東京-松本)その1 ‐金町、神田、吉祥寺、国立(常磐線/中央本線) 【週末パスで信濃へ。妙高高原駅で引き返し、松本の友人を訪ね、大糸線を旅して思い出の白馬へ。先の旅から一週間後のことでございました。】

鉄旅日記2021年4月24日・・・金町駅、神田駅、吉祥寺駅、国立駅(常磐線/中央本線) 20

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 初日(東京-焼津)その3 ‐新金谷、千頭、アプトいちしろ、長島ダム(大井川鐡道本線/大井川鐡道井川線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月19日・・・新金谷駅、千頭駅、アプトいちしろ駅

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 初日(東京-焼津)その2 ‐静岡、金谷、新金谷、代官町、日切、合格、門出(東海道本線/大井川鐡道本線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月19日・・・静岡駅、金谷駅、新金谷駅、代官町駅

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 初日(東京-焼津)その1 ‐金町、東京、三島(常磐線/東海道本線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月19日・・・金町駅/東京駅/三島駅(常磐線/東

「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 最終日(熱海-東京)その6 ‐向河原、津田山、久地、宿河原、中野島、稲城長沼、府中本町(南武線) 【金沢シーサイドライン、根岸線、湘南モノレール、横須賀線、大雄山線、相模線、鶴見線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】

鉄旅日記2022年3月6日・・・向河原駅、津田山駅、久地駅、宿河原駅

「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 最終日(熱海-東京)その5 ‐川崎新町、八丁畷、矢向、平間(浜川崎支線/南武線)/ガス橋 【金沢シーサイドライン、根岸線、湘南モノレール、横須賀線、大雄山線、相模線、鶴見線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】

鉄旅日記2022年3月6日・・・川崎新町駅、八丁畷駅、矢向駅、平間駅

→もっと見る

    PAGE TOP ↑