「鉄旅日記」2020年文月 3日目(萩-三次)その2‐益田、三保三隅、浜田、波子(山陰本線) 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】
鉄旅日記2020年7月25日・・・益田駅、三保三隅駅、浜田駅、波子駅(山陰本線)
10:03 益田(ますだ)駅(山陰本線/山口線 島根県)
日本海に沿って列車は進んでいる。
昨夜は真っ暗だったし、どこを走っているのかも分からない。ただ単に目的地に到達することだけを山陰本線には求めていた。
あれは旅じゃない。さらなる修行が必要だ。
山陰本線に限らず、この国では多くの列車が草萌える狭隘な地に敷かれた鉄路を往く。自然災害があれば、何が起きてもおかしくない道を往く。
今、益田に向かう山陰本線は、そんな道を往っている。荒天の予報もある今日に、東萩を出た時点では異変はないという。
益田に着くまで、車窓から日本海が望める素敵な区間だった。かえすがえすも昨夜が忌まわしい。
9:54益田着。
駅前風景は見覚えのあるものだったが、12年前の昼に寄った回転寿司屋は別の店に変わっていた。


車寅次郎を気取って大きなアタッシュケースを提げて益田を歩いた在りし日。オレの他に客はなく、コンベア機を回さないことを詫びた善人のご主人を思い出す。
10:31 三保三隅(みほみすみ)駅(山陰本線 島根県)
益田発は10:03。
なぜだか柳ジョージの切ないバラード「コイン ランドリィ ブルース」が頭を離れない。そしてムッシュかまやつの「どうにかなるさ」。曇天の下に置かれた日本海の町並にそぐわしい。
益田を過ぎても車窓には日本海があり、石州瓦の家並が続いている。
下り特急通過待ち3分の停車。


列車は海辺から離れ、駅員のいる駅でしばし動きを休めた。
11:15 浜田(はまだ)駅(山陰本線 島根県)
三保三隅を出ると、すぐに日本海に寄る。
折居海岸には駅があり、街道には場末のドライブインが散見される。
オレもたいした暮らしはしていないが、日本海の町並にかぶせる哀愁は、おそらく道理に合うのだろう。
萩には憧れを持った。暮らしてみたいとも思ったよ。
10:54浜田着。


港、島に渡る巨大大橋、整った町並。かつて寄った城跡はトンネルの上にあったのだろう。
石見人は我慢強いとの司馬遼太郎の言が刻まれた石碑が立つ浜田城址。第二次長州征伐の際に浜田藩兵によって火がかけられた。
石州の英雄をすぐに思いつけないが、兵団は強かったに違いない。
三保三隅から浜田にかけて防衛線を敷いて長州軍を待ち構えた幕末の浜田藩兵。友軍として福山藩兵。そして幕府軍目付。
後に武士の鑑と称賛された浜田藩士の岸静江国治は扇原関門にひとり立ちはだかり、撃たれる。長州人もその勇敢さを称えたと伝わる。
そんな風土の中を往く。
11:31 波子(はし)駅(山陰本線 島根県)
この列車に乗った若い娘たちはどこへ行くのか。かつて山口宇部で知り合った女性がTDLのコアなファンだったことを思い出す。
気づけばもう昼前。そして気づけばもう帰り道をたどっている。
恋人と過ごす楽園もまた束の間で、時間になれば無常を感じながら二人は駅への道を往く。
行き違い3分の停車。高台から岸辺に打ち寄せる波を見る。


5年前にも降りた駅。あれからいろいろあって、目指す地域も偏りはしたが、5年もあればオレは戻ってくる。
それが実証された。
関連記事
-
-
「鉄旅日記」2017年夏 初日(東京-大垣)その2-郡上八幡、北濃、美濃白鳥、郡上八幡、関、美濃太田、岐阜(長良川鉄道/高山本線)【私鉄王国で過ごす夏】
鉄旅日記2017年8月11日・・・郡上八幡駅、北濃駅、美濃白鳥駅、関駅、美濃太田駅、岐阜駅(長良川鉄
-
-
「鉄旅日記」2020年文月 初日(東京-香住)その1‐東京、国府津、小田原、三島(東海道本線) 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】
鉄旅日記2020年7月23日・・・東京駅、国府津駅、小田原駅、三島駅(東海道本線) 2020
-
-
「鉄旅日記」2020年盛夏 3日目(肥前鹿島-門司港)その3‐諫早、松原、千綿(大村線) 【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】
鉄旅日記2020年8月15日・・・諫早駅、松原駅、千綿駅(大村線) 11:37
-
-
「鉄旅日記」2020年文月 3日目(萩-三次)その5‐備後落合、備後庄原、三次(芸備線)【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】
鉄旅日記2020年7月25日・・・備後落合駅、備後庄原駅、三次駅(芸備線) 17:10 備
-
-
「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その2 ‐東大館、大館、弘前(花輪線/奥羽本線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】
鉄旅日記2022年1月9日・・・東大館駅、大館駅、弘前駅(花輪線/奥羽本線) 9:53 東
-
-
「鉄旅日記」2020年文月 初日(東京-香住)その5‐並河、園部、胡麻、下山、福知山(山陰本線) 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】
鉄旅日記2020年7月23日・・・並河駅、園部駅、胡麻駅、下山駅、福知山駅(山陰本線) 16
-
-
「車旅日記」2005年春 最終日(富山-松本)走行距離218㎞ その1-アパホテル富山駅前、城川原駅、岩瀬浜駅、東富山駅、中滑川駅、滑川駅、魚津駅、石田駅、電鉄黒部駅、入善駅【松本から富山へ。今にして思えば、なぜこの旅を思い立ったのか思い出せないのでございます。】
車旅日記2005年4月30日・・・アパホテル富山駅前、城川原駅、岩瀬浜駅、東富山駅、中滑川駅、滑川駅
-
-
「鉄旅日記」2013年春【青春18きっぷで、房総途中下車旅】その2-上総興津、安房小湊、安房天津、安房鴨川、和田浦、九重、若井、竹岡、上総湊、佐貫町、青堀、稲毛海岸、新習志野(外房線、内房線、京葉線)
鉄旅日記2013年3月9日その2・・・上総興津駅、安房小湊駅、安房天津駅、安房鴨川駅、和田浦駅、九重
-
-
「鉄旅日記」2018年卯月 その1-取手、竜ケ崎、佐貫、岩間、赤塚、大洗、鹿島神宮(常磐線/関東鉄道竜ヶ崎線/鹿島臨海鉄道)【ときわ路パスでめぐる常陸旅でございます。】
鉄旅日記2018年4月25日・・・取手駅、竜ケ崎駅、佐貫駅、岩間駅、赤塚駅、大洗駅、鹿島神宮駅(常磐
-
-
「鉄旅日記」2008年初夏 最終日(松阪-東京)-松阪、鳥羽、伊勢市、宇治山田、亀山、名古屋、豊橋、浜松、熱海(近鉄山田線/参宮線/紀勢本線/関西本線/東海道本線) 【まほろばの路から紀州へ。紀伊半島で過ごした短い夏の記憶でございます。】
鉄旅日記2008年7月21日・・・松阪駅、鳥羽駅、伊勢市駅、宇治山田駅、亀山駅、名古屋駅、豊橋駅、浜
