「車旅日記」2000年夏Part.1【信濃、飛騨、そして能登島。帰りは北陸路。この国の美しさをあらためて感じました夏旅でございます。】3日目(能登島-氷見-小千谷)能登島、道の駅いおり、氷見港、道の駅ウェーブパークなめりかわ、朝日町栄食堂、親不知ピア・パーク、道の駅能生、長岡市宮本、道の駅おぢや
車旅日記2000年7月22日
2000・7・22 9:00 能登島某リゾートクラブ
昨夜は風の音を聞いた。
それだけしか聞こえなかった。
今は油蝉の声。
空には薄く雲がかかり、光がその上を飛び交っている。
昨日ほどではないけど、今日もしっかり暑くなりそうだ。
テラスに出て風を浴びていると、また眠気がやってくる。
肩の力は抜け、気怠くて、とっておきと言っていい時間。
できればもう少しこうしていたいけど、契約はそうなっていない。
また来るべきだな。
次はひとりじゃない方がいい。
昨夜は少し寂しかった。
10:49 160号国道‐いおり(道の駅) 704㎞
能登島を約半周。
ガソリンスタンドに寄る。
できることなら、もう少しあの島に金を落としたかった。
さっきまでいたマンションは自然の中に塗り込まれるように存在し、まるで違和感がない。
また来るさ。
そう誓う。
能登島大橋は素晴らしい。
いつから無料になったのだろうか。
琵琶湖大橋を思い出し、強烈な横風を受けながら浮き立つ気持ちを放し飼いにした。
おそらく満面の笑顔でいたことだろう。
あれから視界の多くに海を認め、七尾市内を抜け、ここに着いた。
国道の下に掘られたトンネルをくぐると海水浴場で、30人ほどの姿があった。
ビキニ姿の女性を見るのは久しぶりだ。
ここは観光地か。
県外ナンバーの車を見かける。
気に入った夏が来ている。
11:44 氷見港-氷見(道の駅) 729㎞
昨夜は飛ばした能登の道をゆっくりと走り、氷見へ。
これで能登の旅は終わり。
明るい時間帯に走れてよかったと思っている。
昨日は暗い中をあえぐようだった。
空には雲が多いが、晴れている。
七尾に降り注いだ光は隠れている。
道中、ハヤブサが悠然と行く手を横切る。
ここでは人とのふれあいを持てなかったけど、さっきの庵では店の女性の笑顔に気持ちがほぐれた。
できるだけ優しい顔に会っていたい。
そう言えばさっき、2匹の犬が楽しそうにじゃれ合う姿を見た。
カメラがあれば、迷わず押してる。
海鮮館を持つここは多くの人々を集め、こうしていても次々と車がやってくる。
賑わう場所はキライじゃない。
13:16 1号富山県道-ウェーブパークなめりかわ(道の駅) 780㎞
土産の多い旅になった。
それだけ満足度が高いと言える。
車を止めるたびに日差しが強くなる。
誰かにありがとうと言いたい。
このあたりを走るのは初めてになる。
正確には、北陸自動車道でなら2度通っている。
いずれも早朝だったけど、今日は真夏の昼時。
そう言えば富山県警が粋な表示を出していた。
「さわやかに 走ろう 夏の北陸路」。
今日も気温34度。
海からの風が爽やかさを運ぶ。
能登島がきれいに見える。
家で飲む酒がまたひとつ増えた。
14:59 8号国道‐栄食堂(朝日町) 817㎞
ここじゃなかったかもしれない。
よくは覚えていない。
景色はあの時のままだ。
日本海はさっきまではもう少し青かったけど、今はあの日の朝と同じように少し沈んだ色をしている。
おそらくここで彼女の帰りの無事を祈った。
あの旅の中での最高の瞬間だった。
想いは消えても記憶は残る。
特急「白鳥」が金沢方面に向かった。
誰かの旅は今日も続いている。
国道から線路と海が見える場所。
地図を探してもそんな場所はいくつもない。
あの日の想いはそのまま長いこと生き続け、そして今年の3月に終わった。
いい旅をしている。
15:28 8号国道‐親不知ピア・パーク 828㎞
ひと眠りしようと思ったけど、オレは元気だ。
4年前の旅をさっきから忠実にたどっている。
あの日は波の音だけが聞こえたけど、今日は歓声も聞こえる。
ここは海水浴場なんだ。
親不知の難所は前回よりも楽に越せた。
そういうものなのかもしれない。
あの頃より寂しいが、あの頃より楽に生きている。
今回、こうしていることが心底好きなのだということを確認した。
さっき栄食堂で食べた「たら汁」は美味かった。
クセになりそうだが、東京じゃ食べられない。
17:15 8号国道‐能生(道の駅) 858㎞
いい風が吹いて、1時間ばかり眠ることができた。
起きると太陽がまた顔を出し、海と恋人たちを照らしている。
子供たちも元気に遊んでいる。
みんないい顔をしている。
日本海沿いに生きる人々にとって、今日は素晴らしい夏の日だったのに違いない。
太陽のおかげで、海がまた青くなってきた。
19:35 8号国道‐長岡市宮本パーキング 951㎞
コンビニに1度立ち寄り、柏崎まで。
風呂とトイレを求めて2度にわたる迷走を繰り返し、ようやくここで体を休めた。
日本海は柏崎まで続き、不意に市内の雑踏に姿を消した。
おそらく夕日は海に沈む前に雲間に隠れてしまったのだろう。
北陸路は素晴らしかった。
今度はいつになるだろう。
柏崎ではかつて仲間たちと写真を撮った場所の特定ができた。
その後はタフなルートをたどっている。
そして今、夜が訪れた。
海辺で楽しんだ人々は残された時間をどのように使うのだろう。
とうとう暗くなって、もう行ける場所もない。
長岡から17号国道で東京に向かう。
そろそろ店仕舞いを考えてもいい。
もう十分に楽しんだ。
以前にも感じたことだが、このあたりのドライバーはよく飛ばす。
21:49 17号国道‐おぢや(道の駅) 985㎞
旅の最後の夜。
いい場所に着いた。
風呂にも入ったし、素晴らしい青年にも会ったし、オールスターゲームのハイライトも見れた。
落合選手が長谷川投手から放ったホームランを見れた。
道中では花火も上がった。
今夜はこれでおしまい。
不安視していた自信は完全に戻っている。
これなら眠れるだろう。
起きたら、今回最後の旅立ちが始まる。
涼しいな今夜は。
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