「車旅日記」2001年黄金週間 初日その4(東京-京都)-四条烏丸~祇園~桂川PAラブストーリー。【目指したのは彼女が暮らす京都。この時からしばらく、向かう先は劇的なまでに西になったのでございます。】
車旅日記2001年5月3日・・・四条烏丸~祇園~桂川PA
26:53 烏丸通り-四条烏丸交差点 602㎞
まるで予想外。考えてもいなかった事態が起こっている。人生にはこんなことがあるのか。それもことのほかハッピーな形をしている。
ここで天使を待っている。不思議な気分だよ。京都の路上で、オレは恋人を待っている。
とても落ち着かない。煙草くさい車内を気にはしたけど、煙草を取り出さないわけにはいかなかった。途中3人の警察官が横を通り、ひとりが怪訝そうな視線を車のナンバープレートに送った。職務質問に及んだとしたら、こう答えるつもりだった。はるばる東京から恋人を迎えに来たのだと。少なくともこれからひと騒動起こそうとしているような男には見えなかっただろう。
それにしても桂川PAから今に至るまでを思い起こすと、わがことながらとても信じられない。もっと若かった頃にも経験したことのないタフで情熱的なロードだった。ムリをすることは普段あまり考えないが、彼女の存在はオレをやすやすと対岸へと導いた。川を越えたらそこに何が待っているのかを知っていた。
そこではオレに会うために清潔な服に着替えた彼女が待っている。そんな彼女のためなら何でもできる。深い喜びの中でそう感じた。そしてさらに今まで気づいていなかったオレの可能性を知った。
ケータイが鳴った。彼女はすぐそこまで来ている。
天使が手を振った。胸がいっぱいになったよ。
特にその後の行動を決めていなかった。とりあえず祇園方面へ。車を止めなきゃはじまらない。
四条河原町では暴走族の一団が通りを占拠している。怖くなどない。これは本当の話だ。もちろん警戒はした。カラオケに行こうとなったのは車中だったか、車を降りてからだったか。八坂神社下の市営駐車場に車を止めて便所臭い階段を上がって外へ出る。今年3度目の祇園。
あれが「一力」。大石内蔵助が江戸に下る前に散々通ったところ。まるでバスガイドのように彼女が指さす。大石が来るまでは「万」といったらしい。カラオケ店までは駐車場を出て徒歩3分ほど。
通された部屋はオレには広かったが、彼女には狭かったらしい。それが東京と京都の違い。考えてみれば、女性と二人きりでカラオケに行くのは初めてのことになる。タンバリンを見つけてはしゃぎ、新しい歌に挑戦して音程を外していた。
彼女は足を揃えたままかわいいステップを踏んでいる。「お母さんに習ったの」。そう言いながら豊かな声量で次々と歌いあげていく。楽しい時間だった。オレは「時の過ぎ行くままに」。彼女は「ひょっこりひょうたん島」で締めた。母親とカラオケに行くという彼女の育ち方に微笑む。
路上に出たのが29:00。朝が訪れている。徹夜で朝を迎えたのはいつ以来になる。とてつもなく長い一日だった。
これからどうしよう。眠いな。ラブホテルしかないけど、それでいい?彼女は「うん」とうなづく。心当たりなどないが、インターチェンジ近くにいけばあるだろう。一宮での記憶が生々しい。
いくつか言葉を交わすうちに彼女は眠りに落ちる。目的地ではすべての部屋がふさがっている。オレの他にも何台かの車が空いた部屋を探して周辺をさまよっている。こんなのも初めて。何度同じ場所を通っただろう。鳥のさえずりが聞こえ、年寄りは犬を連れ出している。諦めてその一帯を離れてシティホテルに向かうがどこも満室。ボーイに軽くあしらわれる。
祇園では青と感じた空は鈍く気怠い色をしていた。昼近くなってもいいから仕事に出かけるという彼女。思いつく場所は桂川PAしかなかった。「ごめん。そこしかないんだ」。そう告げて、約5時間ぶりにオレは恋人を連れてその場所に戻った。なんという縁だ。
シートを倒す手助けをして彼女を寝かせ、後部席で丸まっていたシェラフをオレと彼女の上にかけて、彼女の手から荷物を放してやり目を閉じた。長い一日は30:00頃に終わった。
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