*

「車旅日記」2006年初夏【これが最後の車旅でございます。鈴鹿山脈を回るように、終着駅を探して走ったのでございます。】2日目(岐阜-津-名張-近江八幡)その1-東横イン名鉄岐阜、大垣駅、養老駅、阿下喜駅、西藤原駅、湯の山温泉駅、四日市駅、鈴鹿サーキット稲生駅

公開日: : 最終更新日:2023/04/27 旅話, 旅話 2006年

鉄旅日記2006年7月16日
2006・7・16 7:11 東横イン名鉄岐阜813号
予想通りの雨。
稲葉山に雲がかかり、岐阜市内は今日一日浮かない。

梅雨明けが待ち遠しい。
昨日のように、どんなに暑くても晴れてる方がいい。

見渡したところ岐阜の街はまだ眠っている。
もっともこの天気だ。
朝寝坊もいいだろう。

9:04 大垣駅(岐阜駅より22㎞)
松尾芭蕉最後の地、大垣。
最後の夢が、この地で彼の脳裏に浮かぶ枯野を駆け巡った。

1600年の西軍最後の夢の地、大垣。
大垣が前衛基地で、やがて壊滅する大軍団は雨の中を関ヶ原に向かった。
アーケード街に隠れるように、重厚な門を構えた城の姿が見えた。

JR、近鉄、旧国鉄樽見鉄道が乗り入れる交通の要衝、大垣。
都会的でもあり、いい街だと思う。

大垣に着くまで素晴らしい田舎道を走ってきた。
田圃脇の用水路に面した素朴な道などは、オレにとっては最高だ。

木曽川、長良川、揖斐川を渡り終えて、関西圏の匂いを嗅いでいる。
すぐ近くに競輪場がある。

旅心が蘇ってきた。
雨は一旦止んでいる。

2012年8月25日撮影

9:59 養老駅(岐阜駅より36㎞)
養老山地に深遠な雲がかかり、また雨が上がった。

酒が湧いたという「養老の滝」伝説が残る養老へ。
伝説の内容をよくは知らなかったが、親孝行を伝える話だったのか。

近鉄が走る養老駅。
とても素敵な駅だ。
はしゃぎだすように車を降りて、新しくした携帯電話のカメラで駅を収めた。

千歳旅館が経営する軽喫茶食堂では主人が朝からビールを飲んでいる。

焦がれている彼女に渡す土産を購入したよ。
日本最初にこの地で製造されたというサイダーと、体にいいということから関西各地から買い求める客がやってくるという酒。
サイダーはオレも今飲んでいる。

縁起物でもある瓢箪の携帯ストラップも購入。
手元でじゃらじゃらしてる。

不意に日が差して蝉の声が聞こえてきた。
今年の第一声をここで聞けてうれしい。

快くホームの便所も使わせてもらう。
もういかなくちゃな。

乗降客はそうそういるわけじゃなく、タクシー運転手は暇を持て余している。

彼女を想った。
夏が始まった。

2018年9月16日撮影

10:53 阿下喜駅(岐阜駅より64㎞)
養老山地を越えて。

山並に沿って道がうねる様は美しかった。
山地越えに要した時間は約30分。
北勢の町へ。

温泉、城跡、野猿。
地図にはそうした文字が見られる。

終着の駅に駅員の姿はなく、待合室で燕が巣を作っている。
煙草を吸いにやってきたオレを威嚇するように親鳥が鼻先を掠め、振り向くと雛鳥が盛大に騒いでいた。

大正3年開業、近鉄北勢線のこの駅には当時の乗車心得が壁に残っている。
あたりに工事中の空地が目立つ、乾いた町の終着駅だった。

三重県に入っている。

11:17 西藤原駅(岐阜駅より71㎞)
三岐鉄道の終着駅へ。
ウィステリア鉄道と呼ばれる模型電車に乗って、子供連れの家族が楽しんでいる。

眼下に大きなお寺を見下ろす駅。
機関車を模したステンレスの駅舎には愛嬌がある。

手前の東藤原駅では長大な貨物列車が停車していた。
鉱山列車のようだ。
途中には巨大な太平洋セメントの工場がある。
関東の誰もが知らないような鈴鹿山脈外れの町。

トンボの大群に遭遇した。
このあたりじゃ夏を迎える前に姿を見せるものなのか。

踏切音がひっきりなしに聞こえてくるが、それは三岐鉄道のものじゃない。

2018年12月22日撮影

12:04 湯の山温泉駅(岐阜駅より94㎞)
湯の山へ。

近鉄の終着駅、湯の山温泉。
鈴鹿山脈に抱かれた高地に温泉場がある。
今じゃたいして観光資源にはなっていないように見える。

ここ湯の山は、「男はつらいよ」第3作目で車寅次郎が恋をした町。
道を上がるとロープウェー乗場があり、恋に落ちた旅館の女将の弟と寅次郎が決闘をした場所と思わしき景色を見た。

駅の背後の山並が見事だ。
そして色とりどりの近鉄電車が入線してきた。

この開放的な駅にやってくる客も、ここで待つ客も多くはない。
寅次郎は傷心を抱えて、この駅から九州へと向かった。

確かあれは寒い季節だった。

2017年3月18撮影

13:11 四日市駅(岐阜駅より117㎞)
近鉄線に沿って街へ下っていく。

石油化学コンビナートが見えてくれば四日市。
そして1号国道へ。

港へ向けて貨物線路が延びる重化学工業都市。
かつて「四日市ぜん息」という怪物を生み出した街に気怠い午後が訪れている。

関西私鉄の雄、近鉄駅のあたりには百貨店などが見える。
そこから港へ下った場所に今いる。

四日市駅には明らかな歴史がある。
1階の広大な待合室には鍵がかかり、2階のレストランは閉鎖されている。
駅舎の大半の機能が止まっている。

JRは、名古屋までなら近鉄より安いと宣伝しているが、明暗は分かれている。
オレは廃れた方にいる。

四日市を目指すなら近鉄がいい。
JRのこの駅に降りたら途方に暮れる。

2014年3月8日撮影

14:03 鈴鹿サーキット稲生駅(岐阜駅より135㎞)
町並が平凡なものになってきた。
世界の鈴鹿での記憶は市役所とテレビ塔しかない。

サーキット場はそこのこんもりとしたあたりにあるようだ。
今日は8耐と呼ばれるレースが行われる会場。
世界が集まる季節はすでに終わっている。

さらに昔に世界の強豪が鈴鹿に集まったことがある。
「全日本プロレス」昭和50年の世界オープン選手権大会。

優勝したジャイアント馬場は、この街でドリー・ファンク・ジュニアに破れている。
2人の数ある闘いで、明確な決着がついた歴史的な大会だった。

サーキットの名を冠した伊勢鉄道が通じるこの駅に駅舎はなく、待合所の窓にはベニヤが貼られ、ガラスは割れている。
並んだ自転車は倒れ、奥には威圧的な右翼の街宣車とバラックがある。

外は暑い。
このまま晴れてくれたらうれしい。

関連記事

「鉄旅日記」2009年秋【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】3日目(大分-佐賀)その1-大分、中判田、豊後竹田、宮地、肥後大津、水前寺、辛島町、熊電上熊本、上熊本(豊肥本線/熊本市電)

鉄旅日記2009年9月20日・・・大分駅、中判田駅、豊後竹田駅、宮地駅、肥後大津駅、水前寺駅、辛島町

記事を読む

「鉄旅日記」2008年皐月【旅は京都から始まり、山陰から下関へ。そして四国へと渡ったのでございます。】最終日(善通寺-東京)-善通寺、多度津、丸亀、坂出、岡山、京都、野洲、東京葛飾(土讃本線/予讃本線/瀬戸大橋線/山陽本線/東海道本線)

鉄旅日記2008年5月6日・・・善通寺駅、多度津駅、丸亀駅、坂出駅、岡山駅、京都駅、野洲駅(土讃本線

記事を読む

「鉄旅日記」2015年春【名鉄電車2DAYフリーきっぷで行く、中京旅】初日その1(東京-岩倉)-蒲郡、三河鳥羽、吉良吉田、西尾、桜町前、新安城、知立、猿投、赤池、豊田市、新豊田(名鉄蒲郡線/名鉄西尾線/名鉄本線/名鉄三河線/名鉄豊田線)

鉄旅日記2015年3月7日その1・・・蒲郡駅、三河鳥羽駅、吉良吉田駅、西尾駅、桜町前駅、新安城駅、知

記事を読む

「鉄旅日記」2009年晩秋【陰陽を行き来した3日間。この国の秋は美しゅうございました。】初日(東京-倉敷)その2-北条町、姫路、播州赤穂、日生、備前片上、西片上、倉敷(北条鉄道/加古川線/山陽本線/赤穂線)

鉄旅日記2009年11月21日・・・北条町駅、姫路駅、播州赤穂駅、日生駅、備前片上駅、西片上駅、倉敷

記事を読む

「鉄旅日記」2008年初夏【まほろばの路から紀州へ。紀伊半島で過ごした短い夏の記憶でございます。】2日目(和歌山-松阪)その2-串本、新宮、尾鷲、紀伊長島、三瀬谷、多気、松阪(紀勢本線)

鉄旅日記2008年7月20日・・・串本駅、新宮駅、尾鷲駅、紀伊長島駅、三瀬谷駅、多気駅、松阪駅(紀勢

記事を読む

「鉄旅日記」2013年春【青春18きっぷで、房総途中下車旅】その2-上総興津、安房小湊、安房天津、安房鴨川、和田浦、九重、若井、竹岡、上総湊、佐貫町、青堀、稲毛海岸、新習志野(外房線、内房線、京葉線)

鉄旅日記2013年3月9日その2・・・上総興津駅、安房小湊駅、安房天津駅、安房鴨川駅、和田浦駅、九重

記事を読む

2020年如月【水上温泉につかりにいったある週末の記憶をSNSへの投稿より振り返ります。】-土合、水上、後閑、沼田(上越線)

鉄旅日記2020年2月8日~9日・・・土合駅、水上駅、後閑駅、沼田駅(上越線) 水上に投宿する前に土

記事を読む

「鉄旅日記」2006年晩秋【浜名湖へ。そして飯田線に乗って、友に会いにいったのでございます。】2日目・最終日-尾奈、新所原、豊橋、本長篠、鳥居、三河槇原、中部天竜、佐久間、大嵐、伊那小沢、天竜峡、松本(天竜浜名湖鉄道/東海道本線/飯田線/中央本線)

鉄旅日記2006年11月4日/11月5日 2006・11・5 東京葛飾金町 清々しい浜名湖畔から

記事を読む

「鉄旅日記」2007年如月【初日天王寺、2日目奈良。宿泊地だけを決めて、心のままに移動した記録でございます。】最終日(奈良-東京)-奈良、亀山、桑名、弥冨、富士、沼津(関西本線/東海道本線)

鉄旅日記2007年2月12日・・・奈良駅、亀山駅、桑名駅、弥冨駅、富士駅、沼津駅(関西本線/東海道本

記事を読む

「鉄旅日記」2020年睦月【秋田内陸縦貫鉄道に乗りにいきました。五能線の名所も歩いた旅初めでございます。】2日目(湯沢-鷹ノ巣)その2‐鯉川、東能代、岩館、深浦(奥羽本線/五能線)

鉄旅日記2020年1月12日・・・鯉川駅、東能代駅、岩館駅、深浦駅(奥羽本線/五能線) 10:19

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2020年卯月【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】初日(東京-新津)その4‐置賜、高畠、米沢(奥羽本線)

鉄旅日記2020年4月4日・・・置賜駅、高畠駅、米沢駅(奥羽本

「鉄旅日記」2020年卯月【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】初日(東京-新津)その3‐仙台、北山、葛岡、山形(仙山線)

鉄旅日記2020年4月4日・・・仙台駅、北山駅、葛岡駅、山形駅(仙山線

「鉄旅日記」2020年卯月【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】初日(東京-新津)その2‐水戸、いわき、原ノ町、鹿島(常磐線)

鉄旅日記2020年4月4日・・・水戸駅、いわき駅、原ノ町駅、鹿島駅(常

「鉄旅日記」2020年卯月【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】初日(東京-新津)その1‐松戸、土浦、友部(常磐線)

鉄旅日記2020年4月4日・・・松戸駅、土浦駅、友部駅(常磐線) 20

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】最終日(速星-東京)その4‐藤枝、静岡、熱海、上野、北千住(東海道本線/常磐線)

鉄旅日記2020年3月22日・・・藤枝駅、静岡駅、熱海駅、上野駅、北千

→もっと見る

    PAGE TOP ↑