*

「鉄旅日記」2005年秋【軽井沢で挙式する身内を祝うために、初めて鉄道で旅をいたしました。ここから鉄旅が始まったのでございます。】最終日(小諸-軽井沢-高崎-水戸-東京)その1-小諸、軽井沢、横川(しなの鉄道)

公開日: : 最終更新日:2024/05/17 旅話, 旅話 2005年

鉄旅日記2005年11月7日・・・小諸駅、軽井沢駅、横川駅(しなの鉄道)

2005・11・7 東京葛飾金町
昨夜の雨は上がり、霧に煙った小諸から見える遥かなる信濃の山並。
ホテルを出る頃には晴れてきた。

品揃えのいい古城の土産物屋で彼女とその他へ。
そして駅近くで友人に酒を。

小諸は懐かしい。
でも懐古園に寄るのは初めてだ。
もちろん街を歩いたこともなかった。

島崎藤村の古井戸があり、粋な食べ物屋がある。
出来立ての町にはありっこないものが歩いていると見つかる。
離れがたい。

従兄弟が言うには、昔の駅前とは違うらしい。
もちろんそうだろう。
世は無常。

でもオレは覚えているよ。
改札を出て最初に見えるあの駅前風景を。

2012年12月9日撮影

駅舎は信越本線の第三セクター移行にあたって上部を付け替えたのだろう。
昔からやっていそうな軽食堂が2階にある。
そこに上がれば、たぶんいい時代が見られただろう。

2012年12月9日撮影

車寅次郎は小諸でも恋をしている。
人情味あふれるいい話だった。
駅舎にはその時の記憶が写真として飾られていた。

ホームにはすでに軽井沢行が待っている。
昔の駅は改札口のあたりが何とも言えずいい。
寒い町ほどいい。
まるで家に着いた時のような気持にさせてくれる。
到着した人々も、あたたかそうな顔をして改札口から町へと出ていく。

2012年12月9日撮影

オレも昔両親に連れられて、暗くなった時分に何度かあの改札口を出た。
そこで見た小諸の駅前風景が初めてみる外界の風景だった。
そしてたいていの場合、その街がその者にとっての故郷を意味するのだろう。
今年になってから信濃人の末裔であることに誇りを感じている。

中学生の頃に夢中になって読んだ「すくらっぷぶっく」という少年チャンピオンに連載されていた漫画がある。
舞台は小諸。
当時はなぜよりによって小諸なのかと思っていたが、今は違う。

登場人物のイチノくんと理美ちゃんが別れ際に唇を重ねたのが小諸駅。
20年前の話だ。
あの漫画の背景には人々が多くいたけど、今朝認められた人影は多くない。
時代だとか、新幹線のコースから外されてしまった街だとか。

どうでもいい。
たんに離れがたかった。
列車が動きだした時は爽やかな寂しさが訪れた。
人生の素晴らしいところは、こうした寂しさを味わうことにもあるのだと感じている。

暦の上では冬を迎えた初日。
そんな日にしては強い日差しが車窓から入ってきていた。
だから小諸はオレの中ではあたたかい。

東小諸、乙女、平原、御代田、信濃追分、中軽井沢。
中軽井沢駅では昨日の駅長さんが丁寧な仕事をしている姿を見かけた。
そして晴天の軽井沢へ。

仕事の電話が入る。
かつて社員旅行で降り立った駅で、空と軽井沢プリンスホテルの人口ゲレンデを眺めながら必要なことを喋り出口へ。
さっぱりとした軽井沢駅前に行楽地の香りはなく、高原の清々しい空気が漂う駅だった。
列車を待つのにワルクない店もある。

2019年2月10日撮影

かつては碓氷峠へと延びていた線路はどうなったのだろうと視線を向けると、線路は続いていた。
見渡す限り続いていた。

峠下の横川駅に向かうバスに乗る。
乗客は10名ばかり。
彼等の行先への興味が湧く。

碓氷峠は何度も上り下りしている。
でも今日見た風景に見覚えはなかった。
雄大で険しい峠の風景。
一際目立つ山が妙義山。
飽きることのない風景に紅が加わっている。

2019年2月10日撮影

横川に着く。
まるで博物館のように、使われなくなったホームに古錆びた特急列車が時代を封じ込めたまま止まっている。
あるいは上野発で一番最後にこの駅に到着した特急列車が、そのまま留め置かれているのかもしれない。

駅舎はとても小さかった。
かつて栄えていた頃からこうだったのだろうか。
周辺の人家は少ない。

2019年2月10日撮影

横川に到着するたびに、大きな駅に着いたと感じていた過去。
列車が峠越えの準備をする間に人々は「峠の釜めし」を買いに走り、オレは「駅そば」に走った。
持ち帰ると伝えたにもかかわらず、陶器によそわれたそばを受け取ったこともあった。

「駅そば」はまだあった。
客足はどうだろう。
時代には置いていかれたが、ここで働く人々に余所者の感慨などはどうでもよく、朝夕に峠を眺めて暮らす。

軽井沢で一緒のバスに乗り合わせた人々が、皆同じ列車を待つ。
缶コーヒーを購入して煙草を吸っていると、まだ少女のような面影を残した女性が火を借りにきた。
可愛らしい女性だったことと、ふと見上げた駅と峠に挟まれた狭い空が美しかったことを覚えている。

鉄道が走らなくなった碓氷峠は明治以前の秘境に戻り、支配権も妙義の神に戻された。

関連記事

「車旅日記」1995年秋【恋に病んで・・・西へ。1号国道をひたすら、大阪の友に会いにいく。】その2-東寺、五条大橋、琵琶湖湖岸道路、米原、関ヶ原・・・・-

車旅日記1995年11月5日 1996・11・5 9:19 1号国道-東寺 京都乱入。 晴

記事を読む

「鉄旅日記」2019年師走【由利高原鉄道鳥海山ろく線に乗りにいきました。初冬の日本海は荒々しく、美しゅうございました。】初日(東京-酒田)その3‐新潟、村上、羽後本荘(信越本線/白新線/羽越本線)

鉄旅日記2019年12月7日・・・新潟駅、村上駅、羽後本荘駅(信越本線/白新線/羽越本線) 11:4

記事を読む

「鉄旅日記」2020年盛夏【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】3日目(肥前鹿島-門司港)その1‐肥前鹿島、肥前大浦、長里、湯江(長崎本線)/鹿島城跡

鉄旅日記2020年8月15日・・・肥前鹿島駅、肥前大浦駅、長里駅、湯江駅(長崎本線)/鹿島城跡

記事を読む

「車旅日記」2004年春【旭川に下りて、思う存分に北の大地を走った旅の記録でございます】4日目(旭川-稚内)走行距離428㎞その2-雄武町日の出岬、マリーンアイランド岡島、千畳岩、神威岬、クッチャロ湖、さるふつ公園、宗谷岬、稚内駅

車旅日記2004年5月4日・・・雄武町日の出岬、マリーンアイランド岡島、千畳岩、神威岬、クッチャロ湖

記事を読む

「鉄旅日記」2018年如月【冬の町を見たくて、週末パスを買いました。】最終日(直江津-六日町-大前-東京)その3-金島、中之条、川原湯温泉、大前、羽根尾、高崎問屋町(吾妻線)

鉄旅日記2018年2月11日・・・金島駅、中之条駅、川原湯温泉駅、大前駅、羽根尾駅、高崎問屋町駅(吾

記事を読む

「鉄旅日記」2009年秋【女川を目指した旅。ここには震災前の女川の姿が残されております。】最終日(新庄-東京)その1-新庄、最上、鳴子温泉、岩出山、北浦、小牛田、鹿又、石巻(陸羽東線/石巻線)

鉄旅日記2009年10月11日・・・新庄駅、最上駅、鳴子温泉駅、岩出山駅、北浦駅、小牛田駅、鹿又駅、

記事を読む

「鉄旅日記」2020年睦月【秋田内陸縦貫鉄道に乗りにいきました。五能線の名所も歩いた旅初めでございます。】初日(東京-湯沢)その2‐新白河、郡山、福島、仙台、あおば通(東北本線)

鉄旅日記2020年1月11日・・・新白河駅、郡山駅、福島駅、仙台駅、あおば通駅(東北本線) 8:22

記事を読む

「鉄旅日記」2019年如月【週末パスで東京から伊豆。そして上州、信州へ。友人は言ったものでございます。何気に大層な移動距離だと。】最終日(安中-東京)その2-屋代、坂城、小諸、三岡、中込、羽黒下、松原湖(しなの鉄道/小海線)

車旅日記2019年2月10日・・・屋代駅、坂城駅、小諸駅、三岡駅、中込駅、羽黒下駅、松原湖駅(しなの

記事を読む

「鉄旅日記」2009年秋【関東ぶらぶら旅その2-武蔵から相模へ】-川口、浦和、深谷、倉賀野、寄居、東飯能、飯能、寒川、茅ヶ崎、辻堂、新橋(京浜東北線/高崎線/八高線/相模線/東海道本線)

鉄旅日記2009年10月27日・・・川口駅、浦和駅、深谷駅、倉賀野駅、寄居駅、東飯能駅、飯能駅、寒川

記事を読む

「鉄旅日記」2018年春【伊那谷へ。長篠へ。安曇野へ。木曽へ。青春18きっぷを握ったそんな旅でございます。】最終日(飯田-安曇野-木曽-東京)その1-飯田、伊那大島、伊那松島、辰野、松本、柏矢町、豊科(飯田線/中央本線辰野支線/篠ノ井線/大糸線)

鉄旅日記2018年4月8日・・・飯田駅、伊那大島駅、伊那松島駅、辰野駅、松本駅、柏矢町駅、豊科駅(飯

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2020年晩秋【大人の休日倶楽部パスで北陸へ。新幹線、在来線特急乗り放題でございます。魚津、雨晴をめぐり、氷見線、万葉線、城端線、七尾線、えちぜん鉄道、福武線、北陸鉄道との再会でございます。】最終日(武生-東京)その1‐越前武生、武生、三方、美浜(北陸本線/小浜線)

鉄旅日記2020年11月23日・・・越前武生駅、武生駅、三方駅、美浜

「鉄旅日記」2020年晩秋【大人の休日倶楽部パスで北陸へ。新幹線、在来線特急乗り放題でございます。魚津、雨晴をめぐり、氷見線、万葉線、城端線、七尾線、えちぜん鉄道、福武線、北陸鉄道との再会でございます。】2日目(砺波-武生)その6‐三国港、田原町、福井駅(えちぜん鉄道三国芦原線/福井鉄道)

鉄旅日記2020年11月22日・・・三国港駅、田原町駅、福井駅電停(

「鉄旅日記」2020年晩秋【大人の休日倶楽部パスで北陸へ。新幹線、在来線特急乗り放題でございます。魚津、雨晴をめぐり、氷見線、万葉線、城端線、七尾線、えちぜん鉄道、福武線、北陸鉄道との再会でございます。】2日目(砺波-武生)その5‐福井、新福井、勝山、福井口(えちぜん鉄道勝山永平寺線)

鉄旅日記2020年11月22日・・・福井駅、新福井駅、勝山駅、福井口

「鉄旅日記」2020年晩秋【大人の休日倶楽部パスで北陸へ。新幹線、在来線特急乗り放題でございます。魚津、雨晴をめぐり、氷見線、万葉線、城端線、七尾線、えちぜん鉄道、福武線、北陸鉄道との再会でございます。】2日目(砺波-武生)その4‐七尾、金丸、宝達、宇野気、本津幡(七尾線)

鉄旅日記2020年11月22日・・・七尾駅、金丸駅、宝達駅、宇野気駅

「鉄旅日記」2020年晩秋【大人の休日倶楽部パスで北陸へ。新幹線、在来線特急乗り放題でございます。魚津、雨晴をめぐり、氷見線、万葉線、城端線、七尾線、えちぜん鉄道、福武線、北陸鉄道との再会でございます。】2日目(砺波-武生)その3‐羽咋、能登部、徳田、七尾、和倉温泉(七尾線)

鉄旅日記2020年11月22日・・・羽咋駅、能登部駅、徳田駅、七尾駅

→もっと見る

    PAGE TOP ↑