「鉄旅日記」2005年秋【軽井沢で挙式する身内を祝うために、初めて鉄道で旅をいたしました。ここから鉄旅が始まったのでございます。】2日目(名古屋-塩尻-小淵沢-小諸-中軽井沢)-名古屋、高蔵寺、多治見、中津川、木曽平沢、塩尻、小淵沢、中込、小諸、中軽井沢(中央本線/小海線/しなの鉄道)
鉄旅日記2005年11月6日・・・名古屋駅、高蔵寺駅、多治見駅、中津川駅、木曽平沢駅、塩尻駅、小淵沢駅、中込駅、小諸駅、中軽井沢駅(中央本線/小海線/しなの鉄道)
2005・11・6 小諸グランドキャッスルホテル402号
名古屋栄のお寺の鐘が鳴ったんだ。
7:00だったよ。
ご住職の平和の祈りが街に響く。
もう一度だけ名古屋のシンボルでもあるテレビ塔を眺めようと振り返った時だった。
街はまだ眠っていた。
名古屋駅までは徒歩約30分。
長距離の切符を求める列は長かった。
クリスマスの用意は整っていた。
でもツリーへの点火はまだ見送られている。
昨夜はそうだった。
京都駅を越える巨大な駅を造った名古屋。
並んでいたあのツリーたちも、おそらくあの京都駅の巨大ツリーを意識してのことだろう。
とにかく大きな街だ。
盛大なる聖夜が訪れることを余所者ながら祈る。
高蔵寺、多治見、中津川、南木曽、木曽平沢、塩尻、小淵沢、中込、小諸、中軽井沢。
素晴らしい道程だった。
千種、春日井を抜けて、名古屋の北の果てを知り、高蔵寺駅の地下道で何事かを想う。
高蔵寺を出るとトンネルに入り、抜けると見事な渓谷に沿って秘境駅が2つ。
その渓谷を過ぎて現れた陶都、多治見。
2019年3月24日撮影
中津川でもよく歩いた。
2017年8月14日撮影
煙り立つ木曽路では浮かれた。
秋の紅はひたすらに美しかった。
南木曽と木曽平沢で一時停車。
駅から見下ろす木曽谷の裾に展開する村は、曇り空の下がやけに似合っていた。
塩尻駅前は閑散としていた。
ここで美味い蕎麦にありつく。
駅のホームで煙草の火をなかなかつけられずにいると、ジッポの火を差し出してくれた紳士と出会う。
何を売り歩いているのかは聞かなかったが、信濃中を回っているらしい。
2018年2月10日撮影
上諏訪でも若干の停車があった。
思い出の街だ。
いくつもの記憶が去来する。
そして若干の甲斐路。
小淵沢に到着する直前に黒い鉄道橋を見た。
あれは廃線なのか。
それとも乗り換えた先で渡る橋なのか。
10数分後に小諸に向けて走る列車に乗ったが、あの橋は渡らなかった。
2018年4月8日撮影
13:22に出るその列車に乗らなければ、軽井沢での式には間に合わなかった。
鉄道で旅するには、計画性を持つことが必要であることをその時初めて知った。
霧雨に煙った小淵沢。
昼下がりだが、まるで夕暮れの情景だ。
しっかりとした冬が毎年決まって訪れる土地の秋の寒い一日は、一足早く冬をまとう。
大鉄道駅としての構内を持つ小淵沢駅の寂しい駅前風景と賑わう土産物屋を記憶に刻み込んで、少しだけ身を屈めながら小海線に乗った。
風景が素晴らしい。
はじめは団体客が多くて閉口したが、彼等は清里で降りていった。
JR最高地点の標識が立つ野辺山までディーゼルカーは喘ぐように登っていく。
その標識はオレも目にすることができた。
軽井沢に着いて、こっちの人々に小海線で来たと言ったら驚いていたものだ。
中込はなかなか素敵な町だった。
駅周辺には、「ここらにはいい高原があるよ」と示すような清潔な静けさと町並がある。
雨はすでに落ちている。
佐久平で未来と遭遇し、やがて信越本線と並走する。
小諸駅で嗅いだ匂いはかつてのオレが知っている懐かしい故郷の匂いだった。
美しい女性鉄道員とすれ違って、しなの鉄道へ。
第三セクターになっても信越本線がまとう旅情に変わりがあるわけじゃない。
中軽井沢駅に着くと雨は本降りになっている。
親切な駅員に懇切な道順を聞いたけど、結局はタクシーを使うことにした。
あの雨はオレの鞄に収まっている傘じゃ心許ない。
式が終わって、帰りに小諸行の列車を待つのに適した店はあるだろうかとあたりを見渡す。
会場に着くと兄を見つけて二言三言。
受付を済まして水割を飲んでいると従兄弟が加わり、場に色がついた。
やがて今夜の主役の従兄弟が登場する。
親族との再会の場を提供してくれた彼に感謝して、男ぶりを誉めて、気持ちよく酔った。
雨が降っている。
なかなかの降りだ。
小諸の街並の白く見える部分に雪を感じる。
ほどなくして寒くなる街だ。
小諸は懐かしく、さっきまで浸かっていた湯はあたたかく、幸せな気持ちでいる。
地元の放送局が流すラジオ番組は退屈じゃない。
もうビールを飲むのはよそう。
明日は小諸を歩く。
遠い日の記憶に残っている夏祭り。
あれはきっと、小諸での出来事だったのだろうと思いながら歩くだろう。
信濃人の末裔であることに誇りを感じている自身に気づいている。
関連記事
-
「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】2日目(高山-速星)その5‐府中鵜坂、西富山、速星(高山本線)
鉄旅日記2020年3月21日・・・府中鵜坂駅、西富山駅、速星駅(高山本線) 17:53 婦中鵜坂(
-
「車旅日記」1997年梅雨明け【疲れきっていた若き日々。またしても向かうのは北でございました。】(東京-鳴子温泉-東京)2日目~最終日-いわき久ノ浜パーキング、亘理、名取、松山町、鳴子サンハイツ、町田
車旅日記1997年7月20日 7:03 6号国道‐いわき久ノ浜パーキング 太陽光線で目が覚める。
-
「鉄旅日記」2009年秋【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】初日(東京-新山口)その2-廿日市、広電廿日市、宮島口、広電宮島口、大竹、岩国、徳山、新山口(山陽本線/岩徳線)
鉄旅日記2009年9月18日・・・廿日市駅、広電廿日市駅、宮島口駅、広電宮島口駅、大竹駅、岩国駅、徳
-
「鉄旅日記」2011年夏【みちのくひとり旅】3日目(函館-鹿角花輪)-函館、木古内、湯ノ岱、江差、津軽新城、川部、深浦、能代、東能代、十和田南(江差線/津軽海峡線/奥羽本線/五能線/花輪線)
鉄旅日記2011年8月15日・・・函館駅、木古内駅、湯ノ岱駅、江差駅、津軽新城駅、川部駅、深浦駅、能
-
「鉄旅日記」2020年卯月【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】最終日(新津-東京)その3‐小野新町、要田、いわき(磐越東線)
鉄旅日記2020年4月5日・・・小野新町駅、要田駅、いわき駅(磐越東線) 12:33 小野新町(おの
-
「鉄旅日記」2007年皐月【夜汽車に乗って東京を離れ、山陰山陽へ。鉄旅最初の長旅でございました。】初日(東京-米子)-静岡、豊橋、本竜野、播磨新宮、佐用、東津山、米子(東海道本線/姫新線/因美線/山陰本線)
鉄旅日記2007年5月3日・・・静岡駅、豊橋駅、本竜野駅、播磨新宮駅、佐用駅、東津山駅、米子駅(東海
-
「鉄旅日記」2018年如月【冬の町を見たくて、週末パスを買いました。】最終日(直江津-六日町-大前-東京)その2-八色、浦佐、五日町、水上、後閑、上牧、八木原(上越線)
鉄旅日記2018年2月11日・・・八色駅、浦佐駅、五日町駅、水上駅、後閑駅、上牧駅、八木原駅(上越線
-
「鉄旅日記」2020年如月【東日本大震災で被害を受けた大船渡に泊まりにまいりました。山田線完全乗車も目指しておりましたが・・。】初日(東京-大船渡)その2‐新白河、郡山、福島、仙台(東北本線)
鉄旅日記2020年2月22日・・・新白河駅、郡山駅、福島駅、仙台駅(東北本線) 8:20 新白河(し
-
「鉄旅日記」2019年長月【三陸鉄道、八戸線に乗りにいきました。区界、吉里吉里など、駅旅の者として見過ごせない駅にも寄りましてございます。】初日(東京-盛岡)その2-郡山、福島、曽根田、仙台、一ノ関(東北本線)
鉄旅日記2019年9月21日・・・郡山駅、福島駅、曽根田駅、仙台駅、一ノ関駅(東北本線) 11:08
-
「鉄旅日記」2017年春【近鉄に乗る日々】2日目(新大宮-大阪難波)その3-橿原神宮前、六田、吉野、近鉄御所、御所、尺土、二上山(吉野線/御所線/南大阪線)
鉄旅日記2017年3月18日・・・橿原神宮前駅、六田駅、吉野駅、近鉄御所駅、御所駅、尺土駅、二上山駅