「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 初日(東京-熱海)その6 ‐谷峨、山北、足柄、沼津、熱海(御殿場線/東海道本線) 【金沢シーサイドライン、根岸線、湘南モノレール、横須賀線、大雄山線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】
鉄旅日記2022年3月5日・・・谷峨駅、山北駅、足柄駅、山北駅、熱海駅(御殿場線/東海道本線)
14:29 谷峨(やが)駅(御殿場線 神奈川駅)
春一番にしては弱いか。湘南海岸に出てから風が出始めて、駅前で砂埃を上げる。



「信玄館」と大書された迎えの車で温泉場に向かった人々。丹沢中川温泉は武田信玄の隠し湯として知られているとある。甲州軍による駿河侵攻から生まれた歴史なのだろう。

オレも熱海で湯治の客となるが、この上りホームに降り注ぐ日差しがありがたい。湯に浸かりながら眠るわけにはいかないが、この日差しの下なら。現に隣に座る男性は目を閉じている。
この里山で春を実感できる今この時を愛してる。ここからひと駅戻る。


それにしても強い風だ。
15:10 山北(やまきた)駅(御殿場線 神奈川県)
軽装の山岳部隊が待つ駅。春の風に花粉のアレルギー反応が出て、目をかく。
函南~熱海間の丹那トンネル開通以前は御殿場線が東海道本線であり、急勾配が続くことからかつては山北機関区を擁し、650名もの職員が働く鉄道の町だった過去を持つ。

山辺の風情に誘われて旧街道を露木米店まで歩き、酒を求める。丹沢の酒。駅前で何を商っているのか分からないご主人に教えられて片道500メートルばかりを往復した。
駅正面には旧街道に溶け込むかのような粋な店構えも見られる。



四半世紀前の深夜にこの駅に車で寄っている。何を書き残したのかは覚えていないが、暗い中にも味わい深さを見いだし、強い印象を記憶しながら生きてきて、今日再訪を果たした。

感無量と言える。
15:49 足柄(あしがら)駅(御殿場線 静岡駅)
恋人の報せじゃ、やはり今日の風は春一番。これだけ木の多い場所にいれば目もかゆい。
里山を象徴するような駅前風景が車窓から見えて、スマホの電池も切れるし、降りることに迷いが生じたが、粋な駅舎があることで迷いを断ち、降りる。


次の列車がくるまで30分強の時間がある。駅舎内の階段を上がるとフリースペース、フリーWi-Fiで充電もできる。得たりと10分ほど居座り、恋人への返信と熱海までの電池切れ不安を払拭した。
ひとつ手前の駿河小山では富士山が見えた。霊峰の姿は見えなくとも山合いには独特の落ち着きと「気」がある。
中央高速道の大きな橋をくぐるように沼津行がやってくる。


17:00 沼津(ぬまづ)駅(東海道本線/御殿場線 静岡県)
御殿場あたりから霊峰はぼんやりと姿を見せた。こんなに近いのにぼんやりと。なにがしかの教訓を導き出せそうな車窓風景だった。
沼津に着く前、御殿場線沿線に操車場が現れる。合流してくる東海道本線が貧相に見える。
定刻通りに沼津へ。春一番は勢いを増したようだ。
お馴染みの駅前だが、明るい時分の写真があったかと記憶を手繰る。


「男はつらいよ」。ホームのおでんや。
過去でしかないものの行き場は、記憶に残るか忘却以外にないが、どれも覚えている。
もっとも、すべてのケースにおいて選択肢が潤沢にあったわけじゃない。たいていは2つに1つの中で生きている。

17:26 熱海(あたみ)駅(東海道・山陽新幹線/東海道本線/伊東線 静岡県)にて




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