「鉄旅日記」2020年文月 3日目(萩-三次)その4‐宍道、加茂中、出雲横田、出雲坂根(木次線) 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】
鉄旅日記2020年7月25日・・・宍道駅、加茂中駅、出雲横田駅、出雲坂根駅(木次線)
13:57 宍道(しんじ)駅(山陰本線/木次線 島根県)
木次線への乗換。時間は5分。
山陰本線の上下線とも列車が去って、木次線の運転士が笛を吹く。
みんな行ってしまって、宍道湖の畔には静寂が。


5年前、雨を避けながら煙草を手にして駅を写した煙草屋の角を思い出した。確かにオレはそこにいた。
煙草は4年前にやめた。それからしばらくして最愛の存在がこの世に生まれた。
14:14 加茂中(かもなか)駅(木次線 島根県)
山陰本線と分かれると人煙稀とも言える段丘をいく。ひたすらに緑の中を往く。
宍道から2駅。ここで行き違い4分の停車。駅を写しに降りたオレ。青少年が2名続く。
丘の麓に立派な駅があった。あの青少年はきっと地域の誇りだろう。



この閑散路線がもう一度役に立つ様を想像してみる。そんな想像が未来を造る。無理に背負わすつもりはないが、彼等の世代に期待したい。
15:50 出雲横田(いずもよこた)駅(木次線 島根県)
出雲大東は町といえる。2名が降りる。車内はひとりを除いて余所者となった。
わずかだが、この路線が止まると困る者がいる。昨日触れた三江線にもいただろう。それを切り捨てていくのが人類の歴史。じきにオレも非難される側に回る。
木次は沿線中のオアシス的な町。三江線じゃ石見川本がそんな町だった。ビールが買えたもんだ。
木次を過ぎて列車は山深い地域を走行するため速度は遅い。昨日は倒木騒ぎで一時ストップしたんだ。運転は慎重を極める。
やがて視界は開け、田野では人々がたち働く。耕作が放棄された棚田は自然な緑に染まる。
収穫の秋に向けて稲穂に向き合う人々を見た。平地は収穫にあてて、山裾に寄り添うように暮らしてきた人々。
理不尽にも大雨は土砂をも降らし、九州をはじめ各地で被害が出た。オレは何度でも祈る。
長いトンネルをくぐった。列車の速度は上がらない。
着いた先の出雲八代で4名が降りて、残すは3名。
亀嵩を出ると乗客はとうとうオレひとり。亀嵩駅のそば屋は時間帯もあってか客足のピークを過ぎていた。列車のドアが開くとヒグラシの声が漏れてくる。
出雲横田駅に到着。行き違い16分の停車。ヒグラシの声に導かれて外に出る。出雲大社とのご縁から大社風にしめ縄が張られた駅舎には侵さざる威厳が備わる。




かつては観光客に沸いたこの路線も今じゃオレひとり。青春18きっぷを使う身が鉄道文化を守る担い手になりうるのか疑問だが、到着した町の人々はそいつがどんな切符を持っているかなどに関心はない。
そしてそいつはビールを売っている店を探し当てる。
16:17 出雲坂根(いずもさかね)駅(木次線 島根県)
木次線ではひと駅ごとに神々の由来が記されている。
出雲は現代を生きる者にとって、どのような存在なのだろうか。
若くして得度する者もいれば煩悩の果てに神にたどり着く者もいる。オレは後者で、本物の愛を知ることで無明は脱した。
地元の古狸を100歳まで生き永らえさせたと伝わる延命水で顔を洗い、水を含む。12年前と駅は変わっていた。




これより木次線はスイッチバッグの難所に差し掛かる。里山は我関せずと夏を予感させる日差しを浴びている。
途中に慰霊碑のようなものを見た。
関連記事
-
-
「鉄旅日記」2020年文月 初日(東京-香住)その5‐並河、園部、胡麻、下山、福知山(山陰本線) 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】
鉄旅日記2020年7月23日・・・並河駅、園部駅、胡麻駅、下山駅、福知山駅(山陰本線) 16
-
-
「鉄旅日記」2006年新春-馬橋、流山、幸谷、新松戸、佐貫、竜ケ崎(常磐線/総武流山電鉄/関東鉄道竜ヶ崎線)【雪の降った翌日。近くのローカル線に乗りに出かけました。】
鉄旅日記2006年1月22日・・・馬橋駅、流山駅、幸谷駅、新松戸駅、佐貫駅、竜ケ崎駅(常磐線/総武流
-
-
「鉄旅日記」2014年冬 初日(東京-鬼怒川温泉)-下今市、新藤原、川治湯元、川治温泉、湯西川温泉、龍王峡、鬼怒川公園、新高徳、鬼怒川温泉(東武鬼怒川線/野岩鉄道) 【まるごと日光・鬼怒川 東武フリーパスで、野州旅】
鉄旅日記2014年12月6日・・・下今市駅、新藤原駅、川治湯元駅、川治温泉駅、湯西川温泉駅、龍王峡駅
-
-
「鉄旅日記」2013年夏 最終日(岩国-東京)-岩国、海田市、岡山、西大寺、播州赤穂、山科、南草津、豊橋、愛野、菊川、熱海(山陽本線、赤穂線、東海道本線) 【青春18きっぷで、鹿児島県志布志へ】
鉄旅日記2013年8月14日・・・岩国駅、海田市駅、岡山駅、西大寺駅、播州赤穂駅、山科駅、南草津駅、
-
-
「鉄旅日記」2021年夏 初日(東京-上田)その1 ‐金町、上野、高崎、水上(常磐線/高崎線/上越線) 【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】
鉄旅日記2021年7月10日・・・金町駅、上野駅、高崎駅、水上駅(常磐線/高崎線/上越線)
-
-
「鉄旅日記」2006年晩秋 初日-掛川、尾奈(東海道本線/天竜浜名湖鉄道)/リステル浜名湖 【浜名湖へ。そして飯田線に乗って、友に会いにいったのでございます。】
鉄旅日記2006年11月3日・・・掛川駅、尾奈駅(東海道本線/天竜浜名湖鉄道)/リステル浜名湖 2
-
-
「鉄旅日記」2021年春 初日(東京-米内沢)その3‐梅ヶ沢、一ノ関、盛岡、小岩井(東北本線/東北新幹線/田沢湖線) 【大人の休日倶楽部パスで東北へ。新幹線、在来線特急乗り放題でございます。続くコロナ禍ではございますが、約半年の辛抱の時を過ぎて、天候にも苛まれながら秋田内陸縦貫鉄道に乗りに行きました。】
鉄旅日記2021年4月17日・・・梅ヶ沢駅、一ノ関駅、盛岡駅、小岩井駅(東北本線/東北新幹線/田沢
-
-
「鉄旅日記」2013年夏 4日目(隼人-岩国)その2-熊本、久留米、鳥栖、吉塚、長者原、古賀、東郷、赤間、幡生(鹿児島本線、山陽本線) 【青春18きっぷで、鹿児島県志布志へ】
鉄旅日記2013年8月13日その2・・・熊本駅、久留米駅、鳥栖駅、吉塚駅、長者原駅、古賀駅、東郷駅、
-
-
「鉄旅日記」2009年秋 5日目(松浦-若松)その1-松浦、有田、伊万里、唐津、筑前前原、姪浜、天神、西鉄福岡、博多(松浦鉄道/筑肥線/福岡市地下鉄空港線) 【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】
鉄旅日記2009年9月22日・・・松浦駅、有田駅、伊万里駅、唐津駅、筑前前原駅、姪浜駅、天神駅、西鉄
-
-
「車旅日記」2006年皐月 3日目(仙台-大曲)その1-ホテルイーストワン仙台、陸前落合駅、愛子駅、作並駅、山寺駅、高瀬駅、蔵王駅、北大石田駅、舟形駅 【東京から出かける最後の車旅。関東、東北を2,265㎞走った記録でございます。】
車旅日記2006年5月4日・・・ホテルイーストワン仙台、陸前落合駅、愛子駅、作並駅、山寺駅、高瀬駅、
