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「鉄旅日記」2020年文月 2日目(香住-東萩)その1‐香住、柴山、餘部(山陰本線)/余部鉄橋 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/05 旅話, 旅話 2020年

鉄旅日記2020年7月24日・・・香住駅、柴山駅、餘部駅(山陰本線)/余部鉄橋

2020・7・24  6:26  香住(かすみ)駅(山陰本線 兵庫県)
日本海と言えば松場蟹。その町で酔った。

素敵に内装された店でカルパッチョとイカの刺身。

ここらじゃイカを食べるもんだよ。かつて入った城崎の寿司屋で勧められたことを思い出す。

正直こう思ったものだ。「イカかよ」。

でも食べてみると、それまでに東京をはじめとした地で食べてきたイカとは明らかに違う食べ物で、以来イカの地位はオレの中で飛躍的に向上して、スーパーで売っているイカもよく食べている。

入ったお店も泊まったお宿も家族経営で、かわいらしい少女がまずはじめに挨拶をくれた。

お宿の若主人の話す言葉は柔らかく、これまでに聞いたどの関西弁とも違っていた。館内はうっすらと香が薫り、最初の目覚めで起き上がった。ほのかにヒグラシの声が聞こえた。

少し方向感覚を失っていたようだ。外に出るまで線路を挟んで海側にいたことにまるで気づいていなかった。

浜辺までは歩いて約5分。人気のない海辺でスサノオに祈りを。そして毎朝の祈りを。

駅にいる。一番列車の到着が近づき、多くの青少年が集まってきた。今日は海辺に沿って進んでいく。

7:07  柴山(しばやま)駅(山陰本線 兵庫県)

豊岡方面にひと駅戻る。

地図を見て海辺の村だと知っていた。駅前に立派なホテルがある。海辺に下りていく途中にも清潔なたたずまいの宿があり、海辺に面してはいくつか並び、蟹料理を謳う。

時に銃砲声のような響きが轟き、柔らかな雨が降る。

丹生大明神に詣でて、さらに祈りを。

海辺ではスサノオに。

祈りは深まり、名の知らない鳥の飛行を目で追う。

恋人に自撮りした写真を送った。この静かな村で過ごした朝を愛している。

8:11  餘部(あまるべ)駅(山陰本線 兵庫県)

ここには7:39に着いている。天空の駅は様変わりしていた。

余部橋梁が付け替えられたことは知っていた。貴重な文化遺産の喪失を悲しんだが、保存のきく大きさじゃない。それでも再訪を心待ちにしていた。

旧橋脚とそこに乗る線路は部分的に残されて、空の駅として開放されている。広場にはかつての余部橋梁の姿が残されている。

人工的なものかと錯覚するほどに鴬は鮮やかに鳴き、静かに雨は降る。

クリスタルタワーを伝って人々が上がってくる。そこから駅までの距離を線路に沿って歩くことができる。何度も行き来したよ。そしてしばらくそこにいる。

あのエレベーターは使わず、下界には道を伝って下りた。

海辺には小さな集落がある。断崖を伝うような道があり歩いたが、ほどなくして行き止まり。

橋を見上げる他にやるべきことを思いつけない。いつまでもそうしていた。

かつての姿を覚えている。丹後を過ぎて、たまたま通りかかったんだ。

威容に驚き、すぐそばにあった喫茶店に車を止めた。その店はもうなかった。そしてその旅の途中で、余部橋梁が印刷されている絵葉書を探した。

2度目は夜だった。闇の中で巨大な存在感を放つ姿を覚えている。

さっき下ってきた道を上がり、駅にたどり着いたかつて。当時も駅舎はなく、当然のように人気はなく、ここじゃないどこかの惑星に存在する銀河鉄道の停車駅のようだった。

次に列車が止まるのはいつだろう。それが例えば今夜でも明日じゃなくても不思議に思えないような現実離れした存在に映った。

断片的な映像しか覚えていないが、昭和の頃に放送されたNHKの番組で、吉永小百合さん主演の「夢千代日記」の冒頭に当時の余部橋梁が登場すると母から聞いたことを思い出した。

離れがたい場所だが、時間がきた。8:38鳥取行に乗る。

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