「鉄旅日記」2019年霜月 最終日(北上-東京)その4‐米沢、福島、上野(奥羽本線/東北新幹線) 【津軽鉄道、弘南鉄道に乗りにいきました。羽州街道を歩いた晩秋の旅でございます。】
鉄旅日記2019年11月4日・・・米沢駅、福島駅、上野駅(奥羽本線/東北新幹線)
17:38 米沢(よねざわ)駅(山形新幹線/奥羽本線/米坂線 山形県)
蔵王を過ぎて、月に気づいた。
上弦の月か。
山形盆地は暮れなずみ、空は群青に変わりつつある。
山に囲まれた日常をほんの少し想像してみた。
かみのやま温泉を過ぎると両側から山が迫り、景観が一変して鄙びていく。
谷間となり人家は途切れ、夜の訪れを急かすように明かりは絶え絶えとなる。
月はまだある。
赤湯が近づき、また開けてきた。
高台を進んでいた山形線から眺める赤湯の小粒な夜景は美しく、勉強中だった目の前の若い女性はいつの間にか眠っている。
平地に下りた山形線からは、もはや町と夜の境界を見分けにくくなっていた。
月も見えなくなっていた。
汽笛がいくつも聞こえていた。
懐かしくて切ない響き。
あの音を、オレはいつもそんなふうに聞いている。
17:17米沢駅着。
外に出ると強い風に吹かれた。
誰もが寒いと口にする。


この連休も仕事に勤しむ協力先に電話して、米沢牛肉弁当を購入するか迷ったが、胃が許さなかった。
米沢までの列車が後ろ2両を切り離して福島行になる。
17:44発。
19:15 福島(ふくしま)駅(東北・北海道新幹線/山形新幹線/東北本線/奥羽本線/阿武隈急行/福島交通飯坂線 福島県)
峠駅名物の「峠の力餅」。
売り子さんの名調子にほだされて購入。
ひとりで大福を8個も食べることができるのか。
朝に食べるのもいいだろう。

大沢、峠、板谷と、ホームはシェルターに覆われている。
米沢から分かれて後、人家の明かりを見ない峠道。
今日4度目の奥羽山脈越え。
福島~米沢間は、日に上下とも6本ずつの運行のみだが、山形新幹線がこの線路を通るため廃線の心配はない。
しかし人跡まれな道だ。
福島盆地へとひたすらに下っていく中で、福島の夜景が美しいという。
東北本線でも福島盆地の景色は楽しんできたが、夜景は知らない。
庭坂へと下る最中に注意深く車窓から目を逸らさずにいると、左手に夜景が見え始めた。
大都会のそれとは比ぶべくもないが、素朴な灯ほど人の心はあたたまる。
笹木野で人が降り、乗ってきた。
福島着18:30。
テレビ塔が光っている。






初めて見る夜の福島。
市民が楽しそうに歩く姿には救われる。
それほど8年前の震災には日本国民が心を痛めた。
来年のオリンピックで、福島は野球とソフトボールの会場になることが決まっている。
旅の終わりは新幹線で。
やまびこつばさ156号。
上野まで快適な旅が保証されている。
20:53 上野(うえの)駅(東北・北海道新幹線/上越新幹線/北陸新幹線/東北本線/山手線/京浜東北・根岸線/高崎線/常磐線/上野東京ライン/東京メトロ銀座線/東京メトロ日比谷線 東京都)
山形で見ていた月がよりはっきりとした姿で右手から照らしてくれる。
太陽は東京で見ても、同じ日の大阪で見ても不思議とも思わないが、月は違った。
もっとも同じ夜に違う土地で月を見る機会はこれまでになかった。
新幹線が実現してくれた奇跡と言える。
20:45上野着。
地下4階から上がると土浦行が待っている。
これが東京。
帰ってきたよ。
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