「車旅日記」2004年春 4日目(旭川-稚内)走行距離428㎞その3-稚内サンホテル 【旭川に下りて、思う存分に北の大地を走った旅の記録でございます】
車旅日記2004年5月4日・・・稚内サンホテルにて
21:39 稚内サンホテル325号
素敵な部屋に案内してもらった。
稚内駅のホームが見える。
やがて踏切の音が聞こえ、特急列車が入ってきた。
22:00発札幌行き。
待合所にいた連中が最北の街の寒さに堪えながらずっと待っていた時間がようやく訪れた。
そしてこの5月4日に、この街にやってくる者は絶えた。
明日の朝までいつものように門を閉ざす。
この最果ての街では。
ホテルの朝食は6:00から。
この街にやってきた者はそのあまりの遠さに畏怖の念を持ち、出発時間を急ぐ。
そんな事情から営業開始時刻が決まったのだろう。
この最果ての街では。
街で一番背の高い建物は全日空ホテル。
列車に乗ったんじゃ札幌まで最短でも4時間半。
空を制した者がこのあたりじゃ一番大きな顔をする。
山口県の宇部でもそうだったな。
オレのように車やバイクでやってきた者は疲れ果て、安宿に泊まり込む。
大きな街からやってきた者が大きな声で自分が暮らす街の話を始める。
誰もサハリンビールなんて注文しやしない。
この日本最北端の街では。
22:00。
札幌行きの特急がホームを離れた。
ドアはゆっくり閉まり、僅かな客を乗せて街を出ていく。
街が発する音があることに気を止める機会は普段あまりない。
でも特急が行っちまったら、何も聞こえなくなって、その存在を知った。
この街にやってきた者は必ず帰っていく。
自分なりに最果てを感じたら元いた場所に帰っていく。
明日のオレも同じだ。
やがて暴走行為を行う者たちが発する騒音が聞こえ、消えた。
まるでこの街にやってくる客みたいだ。
木製の電柱が岬へと続いていく。
他に人工物は見当たらない。
宗谷岬では強く冷たい風に吹かれた。
気温は5度。
この街に着いても温度計は同じ数字を表示している。
でも岬の風はここまでは入ってこない。
開拓民が最後に行き着いた場所だ。
彼等がどこからやってきたのか知らないが、ここで生活していくことを選んだ民に、そして今もこの街を造っている人々に偉大さを感じる。
40号国道を走る車の音はまだ聞こえる。
最果ての北の街。
その看板だけを目指して人々はやってくる。
人は、特に男は北を目指すもんだ。
最南端はそうじゃない。
そう言えば沖縄は2月ですでに夏だった。
でもここでは5月になっても冬の気温。
最北端の街に行くには覚悟がいる。
特急がやってきた。
今夜はもうこの街以外のどこにも行かない特急がやってきて、決して少なくない数の乗客が降りた。
まだ門は開いていたのか。
街中にはスナックもバーもある。
まだ開いてるよ。
オレもタコしゃぶを食べた店を出たあと、どこかで一杯ひっかけていこうという気はあるにはあったんだ。
でもこのホテルのフロントの眼鏡をかけた女性の顔がなぜか思い出され、真っ直ぐに帰ることにした。
たぶんオレの場合その方がいい。
好きなビールならここにも置いてある。
ひとりで来たのなら、最後までひとりでいるってもんだ。
ひとりで到着するのにこれほど適した街はない。
最果ての街で暮らす人々はそのことを知っている。
昔、親父はあのホームを出る汽車に乗って北の大地を旅した。
そんな話を聞かせてくれたことがある。
どんな理由で、どんな経路でこの街にやってきたのか、次に会う時に聞いてみたい。
当時は名寄あたりからオホーツクに向かう線路が敷かれていたんじゃないのか。
そして今から30年も経てば、オレにもそんな話ができる息子がいるだろう。
聞いてくれるだろうか。
どうして親父がこの最果ての街にやってきたのかを。
ホームの明かりが消え、最後の乗客を運んできた特急も車庫に帰っていった。
パチンコ屋のネオンはまだ盛大にやっている。
オレは今最果ての北の街にいる。
そして目の前に35歳になった男の顔が映っている。
2004年5月4日、オレは稚内までやってきた。
関連記事
-
-
「鉄旅日記」2007年如月 2日目(天王寺-奈良)その2-なんば、上本町、鶴橋、桃谷、寺田町、天王寺、恵美須町、新今宮、奈良(南海電鉄南海線/関西本線) 【初日天王寺、2日目奈良。宿泊地だけを決めて、心のままに移動した記録でございます。】
鉄旅日記2007年2月11日・・・なんば駅、上本町駅、鶴橋駅、桃谷駅、寺田町駅、天王寺駅、恵美須町駅
-
-
「鉄旅日記」2008年初秋 初日(東京-羽咋)その2-新西金沢、野町、加賀一の宮、西金沢、羽咋(北陸本線/北陸鉄道石川線/七尾線) 【秋になると北陸に行きたくなるものでございます。能登半島をはじめ、いくつもの終着駅へと行き着いたのでございます。】
鉄旅日記2008年9月13日・・・新西金沢駅、野町駅、加賀一の宮駅、西金沢駅、羽咋駅(北陸本線/北陸
-
-
「鉄旅日記」2013年夏 3日目(南宮崎-隼人)その1-南宮崎、伊比井、北郷、飫肥、日向大束、志布志、油津、日南、木花、田吉、宮崎空港(日南線、宮崎空港線) 【青春18きっぷで、鹿児島県志布志へ】
鉄旅日記2013年8月12日その1・・・南宮崎駅、伊比井駅、北郷駅、飫肥駅、日向大束駅、志布志駅、油
-
-
「鉄旅日記」2016年夏 3日目(小樽-富良野)その2-深川、増毛、留萌、北一已、深川、旭川、美瑛、千代ヶ丘、富良野(留萌本線/函館本線/富良野線) 【じきに廃線を迎える留萌~増毛に用がありました】
鉄旅日記2016年8月12日・・・深川駅、増毛駅、留萌駅、北一已駅、深川駅、旭川駅、美瑛駅、千代ヶ丘
-
-
「鉄旅日記」2019年師走 最終日(酒田-東京)その2‐小波渡、五十川、府屋、あつみ温泉(羽越本線) 【由利高原鉄道鳥海山ろく線に乗りにいきました。初冬の日本海は荒々しく、美しゅうございました。】
鉄旅日記2019年12月8日・・・小波渡駅、五十川駅、府屋駅、あつみ温泉駅(羽越本線) 8:59
-
-
「鉄旅日記」2018年エイプリルフール その2-猪苗代、磐梯町、安子ヶ島、磐梯熱海、郡山(磐越西線) 【8年振りに金町に帰ってまいりました。青春18きっぷはまだ3日分残っております。呼んでくれたのは会津でございました。】
鉄旅日記2018年4月1日・・・猪苗代駅、磐梯町駅、安子ヶ島駅、磐梯熱海駅、郡山駅(磐越西線) 1
-
-
「鉄旅日記」2014年夏 4日目(米子-呉)その2-浜原、粕淵、明塚、石見簗瀬、口羽、宇都井、伊賀和志、三次、矢賀、水尻、かるが浜、呉(三江線/芸備線/呉線) 【青春18きっぷで、中国ぶらぶら旅】
鉄旅日記2014年8月16日その2・・・浜原駅、粕淵駅、明塚駅、石見簗瀬駅、口羽駅、宇都井駅、伊賀和
-
-
「車旅日記」2004年夏 3日目(宮崎-鹿児島)走行距離382㎞その1-アーバンキット宮崎、青島駅、油津駅、串間駅、志布志駅 【九州を一周してみよう。そう思いたった、真夏の日々でございます。】
車旅日記2004年8月13日・・・アーバンキット宮崎、青島駅、油津駅、串間駅、志布志駅 2004・
-
-
2018年初秋 最終日(桑名-東京)その2-大垣、名古屋、金城ふ頭、豊橋、磐田、焼津(東海道本線/名古屋臨海高速鉄道あおなみ線) 【JR東海&16私鉄乗り鉄☆たびきっぷ」でめぐる東海旅】
鉄旅日記2018年9月16日・・・大垣駅、名古屋駅、金城ふ頭駅、豊橋駅、磐田駅、焼津駅(東海道本線/
-
-
「鉄旅日記」2020年初秋 最終日(高松-東京)その1 ‐高松港3番乗場、直島宮浦海の駅、宇野港、宇野駅(高松→直島宮浦フェリー/直島宮浦→宇野フェリー) 【時空の友を訪ねて讃州高松へ。金比羅さん、瀬戸大橋、大歩危、小歩危などを友とめぐり、義仲寺に寄り、直島に渡り、水島臨海鉄道にも乗った4日間の記録でございます。】
鉄旅日記2020年9月22日・・・高松港3番乗場、直島宮浦海の駅、宇野港、宇野駅(高松→直島宮浦フ
