*

「鉄旅日記」2020年盛夏 初日(東京-防府)その5‐北河内、川西、西岩国、櫛ケ浜、防府(錦川鉄道/岩徳線/山陽本線)/錦帯橋 【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/04 旅話, 旅話 2020年

鉄旅日記2020年8月13日・・・北河内駅、川西駅、西岩国駅、櫛ケ浜駅、防府駅(錦川鉄道/岩徳線/山陽本線)/錦帯橋

16:38  北河内(きたごうち)駅(錦川鉄道 山口県)
南桑駅に通じる立派な橋がある。中央には見晴台が膨らんでいる。若かりしオレが恋人や友とあの場所で語らう様を想像した。

周辺は「清流の歌姫」カジカガエルの生息地で、一帯が国の天然記念物に指定されているとの車内アナウンスが流れる。

清流の滝、かじかの滝と命名された沿線の名所は、泣けるほどにささやかなものに過ぎない。水量を誇る季節ではないのだろう。

行きと同じ北河内駅で行き違い2分の停車。

蜩の声に聞き惚れ、戻った車窓から赤トンボの群れを見る。

果てしないような夏空と清流錦川。

17:04 川西(かわにし)駅(岩徳線/錦川鉄道 山口県)にて

18:18  西岩国(にしいわくに)駅(岩徳線/錦川鉄道 山口県)
川西駅着17:02。錦帯橋への道を往く。

夏空広がる川辺に人々は繰り出し、1673年に架けられた後に数度の再建を経た古風な橋のたもとでは水を浴びている。

川西駅から徒歩約20分強。麗しい橋に立つ。

橋を渡るにはいくばくかの金がいる。眼鏡橋を3つ4つ越えた先に対岸がある。

見上げれば6万石の山城。

対岸で売られている土産、岩国武士の意地から生まれた松、佐々木小次郎所縁の巌流柳。

夕方とはいえ灼熱の日差し。

参勤交代時に他藩の城下を通る際には行列の槍を倒すのが礼儀だったが、大藩の場合は小藩を侮り堂々と槍を立てたまま押し通ることがあった。岩国藩は6万石の小藩。そうした風潮に腹を立てて植えたのがこの松。槍を倒さなければ邪魔で通れない。

佐々木小次郎は岩国の生まれ。母から授かった物干し竿の異名を持つ長刀を振るい編み出した剣法「つばめ返し」は、この地でしなやかな柳や燕を相手に生まれたと伝えている。

錦帯橋を後にすると城下町を往く。

岩国寿司に元帥所縁の剣道場。古街道には品と格があり、飽きずに左右を眺めながら炎熱の中を歩いた。

錦帯橋から徒歩約20分。西岩国駅に到着。

西岩国駅は旧岩国駅で、西洋建築の粋を集めた誰もが唸るデザイン。

なぜ現代にこうした建築物が蘇らないのか不思議に思う。こうした建築デザインを超す現代建築を未だに見たことはない。

ここにこうしていられることが道理を超越してうれしい。そしてあたりには誰一人いない。

岩徳線は旧山陽本線だったという事実に久し振りに接した。

列車は錦川鉄道との分岐点を過ぎて川辺に沿って徐行している。

19:41  櫛ケ浜(くしがはま)駅(山陽本線/岩徳線 山口県)
山陽本線への乗り換えを徳山ではなく、ひとつ手前の分岐駅櫛ケ浜で。

跨線橋から徳山~新南陽に連なる工場夜景が見えた。

駅周辺は住宅街で、駅前通りをひっきりなしに車が往来する。

暑かった一日の宵。空は群青に染まり、気の早い星が2つ3つ輝く。汗にまみれた体を蚊が食う。

最近はゴキブリでさえ逃がすオレだが、吸血一族は人類の天敵。やむを得ない。はたく。

群青から濃紺へと急速に色を変えた空。今夜鞄を置く町、防府へと向かう。

20:25 防府(ほうふ)駅(山陽本線 山口県)にて


20:55  ホテル サン防府1Fあすなろ
徳山、新南陽を過ぎてイオンタウンの背後にまるで大都会のように工場夜景がうずくまっている。コロナ禍による被害は受けたのだろうか。

役員としての勤め先では2名の退職が決まり、まだ底の見えない大恐慌との闘いは続く。そんな思いとさっきまで眺めていた工場夜景には何の因果もないが、現在を生きる者として何らの関わりは感じる。

夜景群を過ぎて、夜の浜辺が見え始めた。3日後にこの辺りでたたずんでから東京に帰る。

防府着20:24。車窓から見えた繁華街を歩く。駅からはおよそ5分ほどの距離になる。

高架に沿って店が連なり、人出は多くないが、夜の灯は明るく、すれ違ったホステスは美しい。生憎気になった店は他県人の入店を許さず一帯を後にした。

12年振りの防府だが、あの頃よりも町歩きは洗練されて、神仏への崇拝が加わった。

いろいろあって、この街に帰ってきた。布団をかぶって寝る以外に解決策を見いだし得ない孤独も味わった。

今のオレは孤独じゃない。心から好きなことをしているだけだ。

そして今、この旅の道連れにしてもいいと思える女性を愛している。そして彼女は、オレの恋人なんだ。

関連記事

「鉄旅日記」2020年盛夏 3日目(肥前鹿島-門司港)その3‐諫早、松原、千綿(大村線) 【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】

鉄旅日記2020年8月15日・・・諫早駅、松原駅、千綿駅(大村線) 11:37 

記事を読む

「車旅日記」2004年春【旭川に下りて、思う存分に北の大地を走った旅の記録でございます】最終日(稚内-旭川空港)走行距離353㎞その1-稚内サンホテル、稚内公園、ノシャップ岬、サロベツ原生花園、サロベツ河畔、パンケ沼、下沼駅、幌延駅、雄信内駅

車旅日記2004年5月5日・・・稚内サンホテル、稚内公園、ノシャップ岬、サロベツ原生花園、サロベツ河

記事を読む

「鉄旅日記」2014年春【ときわ路パスで、常陸ローカル旅】その1-水海道、三妻、下妻、大田郷、下館、久下田、茂木、真岡、大和、新治、水戸(関東鉄道常総線/真岡鐵道/水戸線)

鉄旅日記2014年4月27日その1・・・水海道駅、三妻駅、下妻駅、大田郷駅、下館駅、久下田駅、茂木駅

記事を読む

「車旅日記」2005年春【松本から富山へ。今にして思えば、なぜこの旅を思い立ったのか思い出せないのでございます。】最終日(富山-岩瀬浜-糸魚川-松本)走行距離218㎞ その2-泊駅、越中宮崎駅、市振駅、糸魚川駅、頸城大野駅、小滝駅、平岩駅、白馬大池駅、安曇追分駅

車旅日記2005年4月30日・・・泊駅、越中宮崎駅、市振駅、糸魚川駅、頸城大野駅、小滝駅、平岩駅、白

記事を読む

「鉄旅日記」2021年夏 最終日(上田-東京)その1 ‐上田、滋野、長野(しなの鉄道/信越本線) 【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】

鉄旅日記2021年7月11日・・・上田駅、滋野駅、長野駅(しなの鉄道/信越本線) 2021・

記事を読む

「鉄旅日記」2020年如月 2日目(大船渡-釜石)その2‐平田、釜石、陸中山田(三陸鉄道リアス線) 【東日本大震災で被害を受けた大船渡に泊まりにまいりました。山田線完全乗車も目指しておりましたが・・。】

鉄旅日記2020年2月23日・・・平田駅、釜石駅、陸中山田駅(三陸鉄道リアス線) 8:52 平田(

記事を読む

「鉄旅日記」2020年文月 最終日(三次-東京)その1‐三次、上下、府中(福塩線) 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】

鉄旅日記2020年7月26日・・・三次駅、上下駅、府中駅(福塩線) 2020・7・26&nb

記事を読む

「鉄旅日記」2020年睦月 2日目(湯沢-鷹ノ巣)その3‐驫木、風合瀬、大戸瀬、千畳敷、北金ヶ沢(五能線) 【秋田内陸縦貫鉄道に乗りにいきました。五能線の名所も歩いた旅初めでございます。】

鉄旅日記2020年1月12日・・・驫木駅、風合瀬駅、大戸瀬駅、千畳敷駅、北金ヶ沢駅(五能線) 13

記事を読む

「鉄旅日記」2009年皐月【四国へ、途中下車の旅】初日(東京-三ノ宮)-金町、東京、静岡、浜松、弁天島、大垣、美濃赤坂、石山寺、膳所、尼崎、西宮、芦屋、三ノ宮(東海道本線、美濃赤坂支線、京阪石山坂本線)

鉄旅日記2009年5月1日・・・金町駅、東京駅、静岡駅、浜松駅、弁天島駅、大垣駅、美濃赤坂駅、石山寺

記事を読む

「鉄旅日記」2008年初秋 2日目(羽咋-福井)その2-松任、小松、あわら湯のまち、三国港、福大前西福井、田原町、福井(北陸本線/えちぜん鉄道三国芦原線/福井鉄道福武線) 【秋になると北陸に行きたくなるものでございます。能登半島をはじめ、いくつもの終着駅へと行き着いたのでございます。】

鉄旅日記2008年9月14日・・・松任駅、小松駅、あわら湯のまち駅、三国港駅、福大前西福井駅、田原町

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2021年師走 初日(東京-古川)その1 ‐金町、東京、くりこま高原(常磐線/東北新幹線) 【特急乗り放題の大人の休日倶楽部パスで冬の国へ。山田線完全乗車と鳴子温泉郷を始めとした陸羽東線沿線を歩くことが目的でございました。】

鉄旅日記2021年12月4日・・・金町駅、東京駅、くりこま高原駅(常

「鉄旅日記」2021年秋 最終日(飯坂温泉-東京)その5 ‐仙台、鹿島、原ノ町、浪江、常陸多賀(常磐線) 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】

鉄旅日記2021年10月10日・・・仙台駅、鹿島駅、原ノ町駅、浪江駅

「鉄旅日記」2021年秋 最終日(飯坂温泉-東京)その4 ‐山寺(仙山線)/立石寺山門売店/高砂屋本舗 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】

鉄旅日記2021年10月10日・・・山寺駅(仙山線)/立石寺山門売店

「鉄旅日記」2021年秋 最終日(飯坂温泉-東京)その3 ‐米沢、赤湯、中川、山形、北山形(奥羽本線) 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】

鉄旅日記2021年10月10日・・・米沢駅、赤湯駅、中川駅、山形駅、

「鉄旅日記」2021年秋 最終日(飯坂温泉-東京)その2 ‐峠(奥羽本線)/力餅商店/峠の力餅売り/峠駅今昔物語 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】

鉄旅日記2021年10月10日・・・峠駅(奥羽本線)/力餅商店/峠の

→もっと見る

    PAGE TOP ↑