「車旅日記」2001年盛夏 初日(東京-琵琶湖西)その2-駒ヶ根駅、道の駅信州平谷、阿木湖【思い出深き四国初上陸でございます。福山に帰省していた友と待ち合わせ、いつも想っていたのは京都の彼女のことでございます。】
車旅日記2001年8月11日・・・駒ヶ根駅、道の駅信州平谷、阿木湖
8:39 駒ヶ根駅 261㎞
甲州街道から杖突峠を越えると152号国道で高遠へ。いつか両親と高遠の桜を見に行ったことがあった。
戦国の頃に高遠城で散った仁科盛信、小山田昌行といった武田の将士を想い、361号国道で伊那へ。数年前、まるで町全体をライトアップしているような街灯に照らされた人気のない高遠を思い出す。
天竜川に出ると153号国道で南下。ここも今回で3度目のルートになる。信州の小都市らしい涼しくて静かな朝を迎えている。
路傍には道標や朽ち果てそうな鳥居、そしてブランコ。視界には常に山並。道からの風景は都会のそれとはずいぶん違う。その風景に優しさを感じている。
そんな美しい一帯にいるのに、なぜか最近起こった思い出せる範囲のイヤなことを次々と頭に浮かべながら走っていた。日常とはそんなに厄介なものなのか。なぜこんなところにまで。
今回はずっとひとりで4、5日を過ごすことになる。そんなオレにとって、さっき便所で、「紙ないよ。いいからこれ使いなよ。」と言ってティッシュをくれた人の行為がうれしい。
寅さんみたいだったな。やくざ風の身なりだったけど、あの人の表情も声もとてもあたたかかった。
でもオレの後に入ってきた人に同じことを伝えられなかったことが悔やまれる。その人はさっきバス停に腰かけていたけど、少しバツが悪かった。
駒ヶ根にいる時はいつも朝。駅前に無料駐車場を置くこの駅もすっかり馴染みになった。去年朝食をとった場所でもある。
駅舎に店を構えたスナックのママが出勤してきた。そしてここを離れる。
10:38 153号国道‐信州平谷(道の駅) 331㎞
同行者がいた去年のツアーの道をどうやらたどっているようだ。途中で車を降りて涼んだ河原も特定できた。去年よりはかなり早いペースで進んでいるようだ。
この道の駅には温泉をはじめとして多目的施設がある。背後には荘厳な雰囲気を兼ね備えた諏訪神社をいただいている。
神社では旅の無事、両親の安寧、そして彼女の幸せを祈った。あの静寂とひんやりとした空気には心落ち着く。
気温は上がらず涼しいけど、蒸し暑い。多くの人がタオルを提げ、多くの人がトウモロコシをかじっている。
12:11 257号国道‐阿木川湖(ダム) 371㎞
上矢作村に出る418号国道は通行止め。去年もそうだった。忘れていたよ。
去年は稲武町まで南下して257号国道に出たけど、途中に県道を見つけて上矢作村方向へ。心細い山道を抜けて国道に出る時にはいつも安堵感に包まれる。
この場所はよく覚えている。去年も同行者とここで休み、旅で焼けた顔で二人並んで言葉少なく湖を眺めたものだ。同行者は普段からよくしゃべる方じゃない。そしてここにいることを福山で待つ友に伝えたんだ。
ここからがタフでハードだった。岐阜の中心を抜けていくこれからのルートは簡単にはいかないだろう。
ここに着くまでの間に目にしてきたもの。信玄のろし台、信玄塚、岩村城址。オレにはメジャーな場所になる。
岩村では秋山伯耆守信友の悲劇に思いを馳せ、こんな小さな村が戦場になり、城兵ことごとくが皆殺しになった惨劇への物思いにふけった。高遠の時と同じだ。無敵を誇った甲州武田家が滅亡へと向かう所縁の地とこうして巡り合うとは思ってもいなかった。
かつて最も武田軍団に興味を持っていた頃には、このあたりはいつか訪ねるべき場所だった。あれから長いこと生きてきて趣味嗜好は変わったけど、こうして手にした境地がある。
気温は30度を超えて、暑くなってきた。これから暑い地域にどんどん足を踏み入れていく。でもここで聞く蝉の声は真夏というより秋を感じさせる。少なくともオレの耳にはそう聞こえる。
さっき彼女にメールを送った。地図に載っていないこの場所に行き着くことができたらそうしようと思っていた。好きな場所にいることを伝えたかったんだ。
オレは感じている。昨日までのオレとは違う何者かがここまでハンドルを動かしていることを。
このまま生まれ変わりたい。
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