*

「車旅日記」1996年黄金週間【友を訪ねて大阪へ。そして約束の地、金沢へ。夢を見ながら国道を走った日々でございます。】最終日 北陸より東京へ‐その2(R8→R18→R19)直江津駅、新井、豊野町、長野駅、道の駅信州新町、道の駅大岡村

公開日: : 最終更新日:2025/05/13 旅話, 旅話 1996年

車旅日記1996年5月6日

6:58 直江津駅
恋する女よ、いつの間にか日本海とさよならしていたよ。
そしてもうすぐ8号国道ともおわかれだ。

君がまだ眠っているうちに北陸の道を通り過ぎたんだ。
最後まで海は荒れて、風が強かったよ。

人通りのない寂びた商店街を抜けると古い駅があった。
君がこの駅に着くのはどれくらい先なのだろう。

改札口から何本ものレールが見える。
やがて君はいずれかのレールを伝ってこの駅に降り立ち、また違うレールから東京へ向かう。

時刻表を見たけど、どの時刻に君がやってくるのか見当もつかない。
そこにいた神に、君の帰りの無事を祈ったよ。

次は東京で。
いつものように東京で会おう。

君と同じルートをたどるのもここまでだ。
この先オレはひと足先に家路を行く。

ここから南に延びる道をひたすら行けば東京に達する。
また会おう。

オレが通ってきた北陸路はとても寒かったが、彼女が往く頃は暖かくなっているだろう。

早朝じゃまだ冬も居残っているが、太陽が昇ればしっかりと春が息づいているだろう。

オレのように寒い思いをせずに済むだろう。

10:15 18号国道‐新井
ルートは18号へ。
道はまっすぐだった。

気の短い新潟の車がオレを追い抜いていく。
休息を欲しているオレを気にもかけず追い抜いていく。

朝が来れば路上はレースの時間になる。
日本海ルートでの幻想は途切れ、オレは本当に疲れていることを正確に感じとった。

越後路には田中角栄が首相だった頃に整備された休息場所がいくつか設けられている。
ひとつを過ぎてもまたすぐにそんな場所がある。

ダンプカーの隣に車を止める。
外は明かりにあふれ、気温もまずまず。

シートを倒して横になる。
眠りに落ちるのにそれほど時間はかからなかった。
大休止。

車の中にしちゃよく眠れたよ。
ただし夢の中でも同じシチュエーションだった。
連れがいたけど、夢の中でもオレは運転していたんだ。
あまりいい夢じゃなかったな。

連中に言わせれば、オレは鬼みたいな顔をして眠っていたんだろう。
でも仕方ないだろう。
このツアーがタフなものだってことは理解できるだろう。

だから東京まであと何㎞なんて聞くんじゃないよ。

11:15 18号国道‐豊野町
再び走り始める。
ろくに腹に飯を入れていなかったが、そのことは別段気にならなかった。

越後路から信濃路へ。
ある地点から路上は混み始めた。
スキー板を積んだ連中がレースに参入し始めたんだ。

このあたりにもまだ冬は残り、遠くの山並にもまだ白いものが見える。
風景は穏やかだ。
街に向かっているが、当分の間は行き着く街も穏やかな風景の中にあるだろう。

目標を失いかけたが、それはこの日の終着点が東京だったからに他ならない。
さらに走っているルートに問題があった。
その問題はやがて解消されたが、信濃路を知っているオレには新鮮さが感じられなかった。

そこはオレの祖先が暮らしてきた国。
そして一族がそこから遠からぬ場所で今も暮らしている。

ふとそこに寄って今夜の宿を提供してもらうことも考えた。
いい考えだと思ったが、すぐに思い直した。

新井で眠るより以前のことがすべて夢の中のことのように思えるよ。
日本海路は冬だった。
とても長くて寒くてタフな一日を生きた。

今18号の長い坂を長野市内へと下りていっている。
ブルース・スプリングスティーンの「ネブラスカ」がかかっていた。
そしてさっきまで横に居座っていた雪をかぶった山並も消えて、長野盆地に日が差している。

旅の途中ということを忘れかけていたよ。
ここはオレの故郷。
景色に見覚えがあるんだ。

そして日本海を後にすると、彼女の匂いが少しずつ消えていくのが分かった。

12:00 長野駅
昼時を間近に控えた長野市内には豊かな陽光が降り注ぎ、人々の出足も活発で、穏やかな街に着いたことを喜ぶべきかどうか考えていた。

ずっとタフな気持ちでいたかったんだ。
でも街の風景に文句を言うのは筋が違う。

土産を仕入れる場所はここになった。
大阪へ出かけるって言ってきたけど、土産は長野の饅頭。

体力が続く限りオレはどこにでも出没するんだ。
大阪も琵琶湖も、そして彼女がいた金沢もすべて通り過ぎて、長野盆地に現れたってわけだ。
旅はまだ終わっていないどころか、これから先のルートさえ決まっていない。

駅へ向かう道に車を止めて、駅へと歩いていく。
すれ違う人々がオレを見ているような気がした。

スタイルは昨日と変わらない。
帽子もシャツもズボンも下着ですら変わらない。
無精ひげだけが一日生きた分だけ伸びていた。

そんなオレを好奇に近い目で一瞥しながら人々は通り過ぎていく。
それでいい。
オレは旅の途中。

街の人間と呼吸を合わせるわけにはいかない。

12:58 19号国道‐信州新町(道の駅)
最後に信濃路を選んでよかったよ。
次に往く国道についた番号は19。
街を通ることもなく、道は山裾を縫うように敷かれている。

こういう景色。
どこにでもあるものだと思っていたけど、これは長野にしかない風景だってことにたった今気づいた。

旅の果てにたどり着いた場所。
いいところだ。
犀川が泥の河になっていることが気がかりで、ここで何が起こっているのか、人間社会と自然環境を少しだけ心配した。

そして信州新町に着く。
この道の駅でビールを飲んで、おやき食べて。
安っぽいけど、昼めしはこれでいい。
そしてまた車の中で横になった。

この町では、泥の川も本来の正常な色を取り戻していた。

14:14 19号国道‐大岡村(道の駅)
名の知らない鳥が飛んでいる。
鳥といえば最近はカラスくらいしか見ていなかったから、やけに新鮮だよ。

観光ガイドになんか出ちゃいないけど、ここだって立派な観光地だな。
山があって、川が流れている。
オレにはそれだけで十分だ。

こういう場所に来て風景が汚されている様を目の当たりにすると、民度の低い人間がいかに大勢いるかということに驚かされる。

そんな連中がオレと同じように、恋する人に愛の言葉を言おうとしているのか。
ふざけるんじゃないよ。
この世はとてつもなく安っぽい言葉にあふれている。

ここは素晴らしいと、ただそれだけを表現したかっただけなのに、余計な言葉があふれた。

街が近づいている。
追憶のルートが間近に迫った。

関連記事

「鉄旅日記」2011夏【みちのくひとり旅】2日目(秋田-函館)-秋田、男鹿、追分、八郎潟、北金岡、大館、浪岡、新青森、青森、中沢、郷沢、蟹田、三厩、五稜郭、函館(男鹿線/奥羽本線/津軽線/津軽海峡線/江差線)

鉄旅日記2011年8月14日・・・秋田駅、男鹿駅、追分駅、八郎潟駅、北金岡駅、大館駅、浪岡駅、新青森

記事を読む

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 2日目(焼津-静岡)その2 ‐奥大井湖上、接岨峡温泉(大井川鐡道井川線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

2022年3月20日・・・奥大井湖上駅、接岨峡温泉駅(大井川鐡道井川線) 13:18 奥大

記事を読む

「鉄旅日記」2019年長月 2日目(盛岡-宮古)その3-陸中野田、久慈、陸中八木、八戸(三陸鉄道リアス線/八戸線) 【三陸鉄道、八戸線に乗りにいきました。区界、吉里吉里など、駅旅の者として見過ごせない駅にも寄りましてございます。】

鉄旅日記2019年9月22日・・・陸中野田駅、久慈駅、陸中八木駅、八戸駅(三陸鉄道リアス線/八戸線)

記事を読む

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 初日(東京-焼津)その1 ‐金町、東京、三島(常磐線/東海道本線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月19日・・・金町駅/東京駅/三島駅(常磐線/東海道本線) 2022・3

記事を読む

「鉄旅日記」2009年秋 5日目(松浦-若松)その2-宇美、西戸崎、香椎、福間、赤間、折尾、若松(鹿児島本線/香椎線/筑豊本線) 【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】

鉄旅日記2009年9月22日・・・宇美駅、西戸崎駅、香椎駅、福間駅、赤間駅、折尾駅、若松駅(鹿児島本

記事を読む

「鉄旅日記」2019年年始 最終日(一ノ関-東京)その2-本吉、柳津、前谷地、石巻、宮城野原、仙台空港(気仙沼線/石巻線/仙石線/仙台空港鉄道仙台空港線) 【雪が見たくて北へ向かいました。そして初めて仙台空港線に乗ったのでございます。】

鉄旅日記2019年1月6日・・・本吉駅、柳津駅、前谷地駅、石巻駅、宮城野原駅、仙台空港駅(気仙沼線/

記事を読む

「鉄旅日記」2005年初冬 その2-外川、犬吠、本銚子、観音、仲ノ町、銚子、千葉(銚子電鉄/総武本線) 【鉄旅に目覚め、銚子へと向かったのでございます。】

鉄旅日記2005年12月10日・・・外川駅、犬吠駅、本銚子駅、観音駅、仲ノ町駅、銚子駅、千葉駅(銚子

記事を読む

「鉄旅日記」2020年初秋 最終日(高松-東京)その1 ‐高松港3番乗場、直島宮浦海の駅、宇野港、宇野駅(高松→直島宮浦フェリー/直島宮浦→宇野フェリー) 【時空の友を訪ねて讃州高松へ。金比羅さん、瀬戸大橋、大歩危、小歩危などを友とめぐり、義仲寺に寄り、直島に渡り、水島臨海鉄道にも乗った4日間の記録でございます。】

鉄旅日記2020年9月22日・・・高松港3番乗場、直島宮浦海の駅、宇野港、宇野駅(高松→直島宮浦フ

記事を読む

「鉄旅日記」2019年如月 最終日(安中-東京)その3-海尻、八千穂、信濃川上、佐久海ノ口、甲斐小泉、小淵沢(小海線)/海尻城址 【週末パスで東京から伊豆。そして上州、信州へ。友人は言ったものでございます。何気に大層な移動距離だと。】

鉄旅日記2019年2月10日・・・海尻駅、八千穂駅、信濃川上駅、佐久海ノ口駅、甲斐小泉駅、小淵沢駅(

記事を読む

「車旅日記」1997年夏 初日(東京-三国峠-新潟)-町田、東福生駅、山田うどん、前橋市田口町、月夜野道路情報ターミナル、奥平温泉遊神館、越後湯沢駅、堀之内パーキング、道の駅豊栄 【男鹿半島を目指した夏。友と過ごし、旧友と再会したみちのく旅でございます。】

車旅日記1997年8月13日 1997・8・13 10:30 東京町田 出発が遅れている。 急ぐべ

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年神無月 ツレと訪ねた佐原~銚子~香取旅でございます。最終日(銚子犬吠埼-東京)その1 ‐銚子で過ごした記録でございます。/犬吠埼灯台/銚子駅【Facbookへの投稿より振り返ります。】

鉄旅日記2022年10月9日【犬吠埼温泉にて】 水辺の写真ばか

「鉄旅日記」2022年神無月 ツレと訪ねた佐原~銚子~香取旅でございます。初日(東京-銚子犬吠埼)その2 ‐銚子、笠上黒生、外川、犬吠(銚子電鉄)【Facbookへの投稿より振り返ります。】

鉄旅日記2022年10月8日・・・銚子駅、笠上黒生駅、外川駅、犬吠駅

「鉄旅日記」2022年神無月 ツレと訪ねた佐原~銚子~香取旅でございます。初日(東京-銚子犬吠埼)その1 ‐成田、佐原(成田線)/佐原の大祭【Facbookへの投稿より振り返ります。】

鉄旅日記2022年10月8日・・・成田駅、佐原駅(成田線)/佐原の大

2022年秋【SNSへの投稿より】秋の江戸川堤の景色をご堪能くださいませ。

【再び路上へ 2022年10月2日】 葛飾に戻りましてから4年

2022年初秋【SNSへの投稿より】両国散歩-両国駅、吉良邸跡、回向院、鼠小僧供養墓、国技館、旧国技館(日大講堂)跡、隅田川、両国物語

【2022年9月8日 両国散歩】 お得意先を訪ね、お昼時に町に

→もっと見る

    PAGE TOP ↑