*

「鉄旅日記」2005年初冬【鉄旅に目覚め、銚子へと向かったのでございます。】その1-松戸、我孫子、成田、銚子(常磐線/成田線/銚子電鉄)

公開日: : 最終更新日:2023/04/27 旅話, 旅話 2005年

鉄旅日記2005年12月10日
小さな旅に出た。
旅心はすぐにやってきた。
初めて気づいた。
江戸川を越えさえすればよかったのだと。

松戸で常磐線快速電車に乗り換える。
かつても降りたことはある。
天へと延びる昭徳大学の棟は記憶になかった。

2009年10月20日撮影

次の停車駅は柏。

2012年6月18日撮影

読み物は松本清張の短編集「張込」。
最初の事件は我孫子に着いても解決しなかった。

成田線とのターミナル駅、我孫子。
繁華街を持たない街。
きれいな茶色の現代的な駅舎で、手賀沼観光の拠点にあたる。

歴史のある駅で、駅前ロータリーにはSLを描いた記念碑が立っている。
あるいは古いものかと思ったが、確か平成15年の作だった。
広場にはクリスマスの飾りができている。

2018年9月22日撮影

成田線は単線で、車窓風景の主役は家並か冬枯れた田野。
風景の端に青い広がりがある。
おそらく手賀沼だったのだろう。

鄙びた駅をいくつか過ぎていく。
難しい読み方の駅がある。
木下で「きおろし」。
下総松崎で「しもうさまんざき」。

同僚のA君は成田の2つ手前の安食駅から日暮里の職場まで通っている。
ご多聞に漏れず鄙びた駅だった。

駅が近づくと、まず駐輪場が現れる。
そんな沿線風景だった。
下総松崎あたりで見えた水辺らしきものは印旛沼だろう。

成田まで約40分。
次に来る列車は鹿島神宮行で約10分後に到着する。
銚子に行く列車は1時間近く待つことになる。

街に出る。
商店街の表示に従い歩くと京成成田駅。
JR駅に比べると格調は劣るが、成田山の提灯が下がる様は、当たり前だがどこの街にもないものだ。
人の流れはJRを上回るかもしれない。
ホテル、旅館の類も京成駅のあたりに集中している。

2013年1月12日撮影

きれいな地下道を抜けると新しい街があった。
成田にはあまりいい印象を持っていなかった。
両親と、そして高校の卒業遠足でも来ている。
子供だったオレには成田山新勝寺は面白くもおかしくもなく、石段を上がるのがつらかったという朧げな記憶がある。

その評価は不当なものだった。
大人になったオレに、成田は大人の顔を見せてくれた。
JR駅に戻るべく歩道橋を渡り、うらぶれた繁華街を歩くと表参道に出る。

目を見張ったよ。
さすがに大本山を擁する参道で、まるで果てが見えない。
洒落た飲食店に佃煮屋、鰻屋。
上品な女将が店先に出て上品な客引きをしている。

引き返す機会を持てずに歩いていくと、やがて坂を下り、参道は歴史を纏う。
あの風景をとても気に入っている。
五重塔が見えて、工事中の山門が現れる。
若い女性が一礼して上がっていく。

成田は空港の街じゃない。
ましてや闘争の街でもない。
大寺院を擁する格式高い街だった。

表参道を引き返す。
どうにもオレはうらぶれた路地を歩くのが好きで、そんな一角を探し歩きながら駅に戻った。

JR成田駅も素晴らしい。
成田山の提灯はもちろんのこと、駅舎も仏閣を思わせる。
駅もすでに仏域だったようだ。

2013年1月12日撮影

待ち人のいないホームで銚子行を待つ。
缶コーヒーを購入して煙草をくわえて、ふと空を見上げる。
成田はこの国最大の国際空港を抱えている。
10分の間に数えた飛行機は2機だけだった。

仄かな風に冷たさはなく、暖かな日差しが降り注ぐ12月の一日。
銚子までは約80分。
長い車中だった。
止まっていく駅は鄙びていて、唯一佐原では心が躍った。
武家屋敷のような門構えの「駅そば」があった。

一月前に両毛で眺めた広大な関東平野はこんなところまで続いている。
オレは無知を恥じた。
北海道でしか見られないと思っていた180度に広がる無限を思わせる空が続いていた。
その規模はあるいは北海道を上回るかもしれない。
嘆息の思いで、その風景を見続けた。

やがて水郷。
利根川の姿が散見されるようになる。
そして、かつて友人が結婚式を挙げた鹿島セントラルホテルと、臨界の工場群が空に向けて突出した光景が利根川の対岸に現れる。
オレの歴史の中ではあのあたりも立派に居場所を保っている。

銚子は終着駅としてやはり相応しい。
駅前に出た。
記憶通りでもあったし、違ってもいた。
南洋の木々が強烈に印象に残っていたが、目立たない。

2012年3月3日撮影

あれは9月。
肌寒い日だったけど、街には熱気があった。
その記憶が椰子の木々を実際よりも多く数えさせたのだろう。

銚子電鉄の切符を購入して、先ほど降り立ったホームへ。
奥まったところに、銚子電鉄の各駅舎を特徴づけていた教会のような境界線をくぐると、鉄道ファン垂涎のワンマンカーが止まっている。

2018年9月22日撮影

終点の外川まで約6㎞の電車道。
犬吠の手前でアナウンスが流れ、目を向けると白い灯台が見えた。

関連記事

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】初日(東京-高山)その2‐甲府、日野春、長坂、青柳(中央本線)

鉄旅日記2020年3月20日・・・甲府駅、日野春駅、長坂駅、青柳駅(中央本線) 8:15 甲府(こう

記事を読む

「車旅日記」2004年春【旭川に下りて、思う存分に北の大地を走った旅の記録でございます】4日目(旭川-稚内)走行距離428㎞その1-藤田観光ワシントンホテル、愛別駅、上川駅、白滝駅、丸瀬布駅、遠軽市太陽の丘公園 瞰望岩、遠軽駅、オホーツク氷紋の駅

車旅日記2004年5月4日 2004・5・4 7:59 藤田観光ワシントンホテル1011号 出発

記事を読む

「車旅日記」2005年初夏【長岡、会津、庄内。戊辰戦争ゆかりの地を巡りたかったのだと記憶しております。】2日目(山形-左沢-新庄-鶴岡-新潟)走行距離313㎞ その1-アパホテル山形駅前大通、羽前山辺駅、寒河江駅、左沢駅、柴橋駅、天童駅、村山駅、新庄駅、羽前前波駅

車旅日記2005年7月17日 2005・7・17 8:51 アパホテル山形駅前大通802号室

記事を読む

「鉄旅日記」2009年秋【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】4日目(佐賀-松浦)その2-大村、竹松、早岐、佐世保、佐世保中央、中佐世保、左石、佐々、たびら平戸口、松浦(大村線/佐世保線/松浦鉄道)

鉄旅日記2009年9月21日・・・大村駅、竹松駅、早岐駅、佐世保駅、佐世保中央駅、中佐世保駅、左石駅

記事を読む

「鉄旅日記」2009年初夏【上信越ひとり旅】最終日(長岡-東京)-長岡、東三条、吉田、新潟、新津、会津若松、郡山、磐城石川、磐城塙、玉川村、常陸大宮、金町(信越本線/弥彦線/越後線/磐越西線/水郡線/常磐線)

鉄旅日記2009年7月20日・・・長岡駅、東三条駅、吉田駅、新潟駅、新津駅、会津若松駅、郡山駅、磐城

記事を読む

「車旅日記」2000年夏Part.1【信濃、飛騨、そして能登島。帰りは北陸路。この国の美しさをあらためて感じました夏旅でございます。】3日目(能登島-氷見-小千谷)能登島、道の駅いおり、氷見港、道の駅ウェーブパークなめりかわ、朝日町栄食堂、親不知ピア・パーク、道の駅能生、長岡市宮本、道の駅おぢや

車旅日記2000年7月22日 2000・7・22 9:00 能登島某リゾートクラブ 昨夜は風の音

記事を読む

「鉄旅日記」2014年夏【青春18きっぷで、中国ぶらぶら旅】最終日(呉-東京)-呉、広、竹原、安芸幸崎、松永、東尾道、相生、西相生、比叡山坂本、用宗、富士、沼津(呉線/山陽本線/赤穂線/湖西線/東海道本線)

鉄旅日記2014年8月17日・・・呉駅、広駅、竹原駅、安芸幸崎駅、松永駅、東尾道駅、相生駅、西相生駅

記事を読む

「鉄旅日記」2005年聖夜【廃線となった鹿島鉄道に乗った記録が残されておりました。】-鹿島神宮、新鉾田、鉾田、石岡(鹿島線/鹿島臨海鉄道/鹿島鉄道/常磐線)

鉄旅日記2005年12月24日 記憶には残るだろう。 朝はもたついたが、計画通りに出かけたよ

記事を読む

「鉄旅日記」2013年春【青春18きっぷで、関東途中下車旅】その2-結城、下館、川島、岩瀬、笠間、十王、小木津、磯原、湯本、内原、羽鳥、土浦、ひたち野うしく(水戸線、常磐線)

鉄旅日記2013年3月31日その2・・・結城駅、下館駅、川島駅、岩瀬駅、笠間駅、十王駅、小木津駅、磯

記事を読む

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】初日(東京-高山)その5‐飛騨金山、下呂、禅昌寺、飛騨萩原、上呂(高山本線)

鉄旅日記2020年3月20日・・・飛騨金山駅、下呂駅、禅昌寺駅、飛騨萩原駅、上呂駅(高山本線) 16

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2020年卯月【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】初日(東京-新津)その2‐水戸、いわき、原ノ町、鹿島(常磐線)

鉄旅日記2020年4月4日・・・水戸駅、いわき駅、原ノ町駅、鹿島駅(常

「鉄旅日記」2020年卯月【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】初日(東京-新津)その1‐松戸、土浦、友部(常磐線)

鉄旅日記2020年4月4日・・・松戸駅、土浦駅、友部駅(常磐線) 20

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】最終日(速星-東京)その4‐藤枝、静岡、熱海、上野、北千住(東海道本線/常磐線)

鉄旅日記2020年3月22日・・・藤枝駅、静岡駅、熱海駅、上野駅、北千

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】最終日(速星-東京)その3‐多治見、金山、豊橋、御厨(太多線/中央本線/東海道本線)

鉄旅日記2020年3月22日・・・多治見駅、金山駅、豊橋駅、御厨駅(太

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】最終日(速星-東京)その2‐猪谷、高山、久々野、古井、美濃川合(高山本線/太多線)

鉄旅日記2020年3月22日・・・猪谷駅、高山駅、久々野駅、古井駅、美

→もっと見る

    PAGE TOP ↑