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「車旅日記」2001年黄金週間 2日目その2(京都-志賀-京都)-祇園まで彼女をさらいに行ったのでございますが・・・【目指したのは彼女が暮らす京都。この時からしばらく、向かう先は劇的なまでに西になったのでございます。】

公開日: : 旅話, 旅話 2001年

車旅日記2001年5月4日

大津方面に向かう161号国道は渋滞している。ハウンド・ドッグ&極楽オールスターズの演奏が終わり、エルビスが楽しげにマイクの前に立った。

湖西道路に乗ろうか迷ったけど、最初のチャンスは逃してしまった。とりあえず琵琶湖大橋につながるクロスロードまではと思って走ったが、一向に京都に近づく気配はなく、当てずっぽうに脇道を走りだしたら湖西道路に出た。

トールゲートまではスムーズに流れ、161号国道の流れにしびれを切らした連中と合流する地点でまた渋滞が始まった。するとケータイが鳴る。てっきり到着が遅れているオレの居場所を確かめるために彼女が鳴らしたのだと思ったけど、しばらく聞いていなかった女性の声が聞こえてきた。

声の主は会社のかつての同僚で、今は静岡の藤枝で旦那さんと一人息子と暮らしている女性だった。さらに彼女の同期の女性、さらに元先輩。元先輩と同期の女性が藤枝に遊びに行って話が盛り上がり、オレを思い出したとのこと。

その状況を気に入った。2度とはないだろう。友人が集まりオレに電話をしたら、オレは大津から京都に向かう途中。なぜオレはそんなところにいる?恋人に会いにいくために。証人の存在を欲していたのかもしれない。気持ちよく電話で話し、東京に戻ったらまた電話しますと言って話を終えた。

なかなか会える恋人じゃないが、人とは少しばかり違った恋をしている。

そのストーリーに旧友が混じった。忘れがたい記憶がひとつ加わった。胸は高鳴り、気分は天を駈けて、やがて渋滞も収まり1号国道へ。昼間の道を逆にたどっている。その道を京都に向かっている。そこらあたりで暮らす人々のようにごく自然に路上にいた。そして関西圏と密接な関係を構築しつつあることを確信した。

バンドはストーンズに変わっている。右に曲がり祇園の真ん中を突っ切り、四条通りに突き当たる。今夜も八坂神社は鮮やかな明かりを浴びている。その地下に車を止めようとしている。昨夜もオレはそこにいたんだ。

慣れた様子で地下から脱け出して鴨川方面に数十歩。数歩行き過ぎたが、すぐに馴染みの路地を十数歩。そこに彼女が働く店がある。ドアを開ける。「あらっ」と彼女。今夜はいつもより混み合っている。先客が5人、陽気に騒いでいる。

いつも思うが、客層も含めてこの店はいい。先客が代わる代わるに歌を入れていく。彼女が手拍子をとる。そのたたずまいは素敵な大人の女性で、ある種の風格さえ身につけている。昨夜のカラオケ屋とは明らかに様子が違う。聞いたことはないが、その姿からは職業に対する誇りを感じとれる。あらためて彼女に恋してしまったようだ。

彼女をずっと見ていて、彼女も他の客が歌っていない時はオレと目を合わせ、ずっと気遣ってくれていた。彼女との関係は強固なもの。朝に交わした約束がある。彼女を連れて琵琶湖に戻り、二人で朝を迎える。そんな約束。

オレはすぐに先客の関西紳士に馴染み、隣に座った大阪の酔客といろいろ話し、後から入ってきた大男のプロレスファンとは大いに盛り上がった。そこにひとつだけ後悔する事態がはさまった。話しかけてきた彼女に何も答えなかったんだ。今もたまに引っかかる。思うようにメールをくれない彼女を想って悶々とする時などに。

でもトイレから戻るオレに優しく笑いかけるくれる彼女に安心していた。あの夜は何度も彼女に恋したよ。やがて彼女は着替え、オレは「お先に」と他の客に挨拶を済ませて外に出る。その先のことは疑っていなかった。

オレを送り出すために彼女とミホさんも一緒に外に出る。ミホさんが先に店に戻り、オレと彼女。その時にはもう分かっていた。彼女はついてこない。「上がれないの?」「新しいお客、ほらあの歌姫。彼女が来たからムリ」「そう」。。

二人は自然に手を握り、軽く抱き寄せた。右頬、次に左頬にキスをして、触れるように唇を合わせた。

「じゃあ」と歩き出す。「明日も仕事なのだー」と彼女は両手を大きく振る。振り返ったオレも大きく手を振る。それがこの旅で見た彼女の最後の姿。

次に振り返った時にはもう彼女はそこにいなかったか、あまりにも距離を置いてしまったためか、オレの目は彼女の姿を正確にとらえることはなかった。

かなり酔っていることに気づいたのもその時だった。

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