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「車旅日記」1996年秋【恋に病んで・・・西へ。1号国道をひたすら、大阪の友に会いにいく。】その1-箱根関所跡、片浜駅、静岡駅、中田島砂丘、尾張大橋、伊勢大橋、関駅、近江大橋、南茨木駅-

公開日: : 最終更新日:2019/08/14 旅話

冒険家志望のあなたへ【1話】

 

車旅日記1996年11月3日その1
11・3 1:13 箱根関所跡
緊張は続いている。
一本目の煙草はそれ程うまくない。

これから山下り。
他のドライバーはとてもラフだ。
たまに怯えるよ。

テープはボブ・ディラン30thライヴ。
R&Rがオレを救ってくれそうな気がする。

この箱根を越えれば気持ちも落ち着くだろうか。

まだオレにはこの道が大阪まで続いているとは思えない。

2:05 片浜駅
箱根の山には冬が訪れようとしていた。
とても寒かったよ。

山下りの途中、オレに暖をくれたのは空に上がっていた月だけだった。
やけにいい色をしていたよ。
そして平野に下りてきた時にはもう姿を消していた。
きっとこれから朝が来るまで箱根の山だけは照らしているんじゃないか。
お蔭で助かったよ。

少しは体も暖まってきた。
時折、貨物列車が轟音と共に通り過ぎる。
そして風の音が聞こえる。

沼津まで来れば星もきれいだ。
それと箱根の山から見えた三島の夜景はとてもきれいだった。
彼女にも見せてあげたかった。

さて、まだまだ、朝が来るまで。

3:17 静岡駅
戦争にでも行くような装備をしたトラックをはじめ、夜を走るドライバー達とは何とか良好な関係を保ったままここまで来た。

それにしても東海道は果てしない。
今夜の寝床は浜名湖あたりになりそうだ。

こんな時間だ。
人気はないものだとばかり思っていたけど、さすがは静岡市内。
それなりの車通りがある。

駅構内には早くも始発を待つ連中が見え始め、何やら怪しげな笑い声をあげている。

そろそろ腹も減ってきた。
そして辺りが騒がしくなってきた。

夜もここまで来れば、この夜が続くことよりも、みんな夜明けを待つ。

さて、しるこも買い込んだし、このまま走りながら朝を待つことにするよ。

5:03 中田島砂丘
寝る場所として相応しいかどうか知らないが、思い出の場所に着いた。

あの時はちょうど夏が始まろうとする頃だった。
今は冬が挨拶にきてる。
とても寒くて星がきれいだ。
ここまで来りゃ夜空はこんなふうに見えるんだな。

少ししんどいけど気分は悪くない。
ただ、眠れるだろうか。

駐車場に入れて一眠りと思っていたけど、入れなかったよ。
オレも甘いな。
でも目標の地点まではたどり着いた。
少し休むよ。

これでようやく一日が終わったよ。
君はいい夢を見ているだろうか。
最近はろくろく話していない。
ちょっと気がかりだよ。

もう煙草はいいな。
おやすみ

6:30 中田島砂丘
ほんの少しだけ眠ったよ。

朝だし外へ出て伸びでもしようかと思ったけど、やめたよ。
寒いんだ。

さて、また始まるな。
何がって、一日がさ。

8:22 1号国道-豊川市内
朝飯まで2時間かかるとは思わなかったよ。

浜松以西にはファミリーレストランの進出が見られず、1号国道はたんにレースの場と化していた。
みんなよく飛ばす。

このあたりの人情はよく分からない。
東京とはまた別の人種が多く住んでいそうだ。

ブルースを気持ちよく聴いていたつもりが、豊橋ナンバーに包囲されだしてから少しずつ何かがズレていっている。
こんなに気持ちのいい朝なのに。

異文化との遭遇はお互い様だ。
ひとつ穏やかに頼むよ。

11:00 1号国道-豊川市内
あれから眠るとはね。
でもよく寝た。

ここからがタフになる。
取り敢えず名古屋はすぐそこだ。
土産を買い込もう。

出発からちょうど12時間。
目覚めてみて、やっと何をしに行くのかが明確になってきたよ。

11:30 1号国道-岡崎市内
三河の空は東京と同じだよ。
青に数層のスモッグをかけたような空。
限りなく澱んでいる。

景色は平板で5月に東北の山河が与えてくれた感動はここにはない。

先には大都市が控えているけど、渋滞解消か。

14:00 1号国道-名古屋市内
閑散とした大都会を抜けた。

通り過ぎてきた街はオレにはひどく空虚なものに見えた。
通過するだけの街であったからだろうか。
よく分からないけど、昼飯のきしめんは美味かった。

1号国道は続いていく。
オレの気持ちを和ませる風景はごく僅かだった。
海が見たい。
山が見たい。
何より君に会いたい。
今そんな気分だ。

音楽は何にしよう。
まだまだ途中だ。

瀬田の橋を渡る頃にはもう日は暮れているだろうか。

14:20 1号国道-尾張大橋
渋滞中・・・

14:27 1号国道-伊勢大橋
渋滞中・・・。

こんな状況下の人間の行為とはつくづく醜いものだ。
心ないトラック野郎が教えてくれたよ。

音楽を止めて、水の音を聴いた。

14:49 1号国道-桑名市内
気だるい午後、道路状況は芳しくない。

ひとりポール・マッカートニーだけが楽しげだ。

15:14 1号国道-四日市市内
渋滞中・・・

名古屋とはうまくやれない。
何度か友好関係を保とうと試みたけど、彼等にその気がない。

結婚式には回りに見せつけるかのように金をかけると聞くけど、車の運転でもその国柄を理解できるような気がするよ。

16:05 関駅
ここはいい所だな。

ようやく旅の収穫を得た思いだよ。

日が傾き、風にススキが揺れている。
駅で列車を待つ人は疎らで、さっきまで通過してきた街とはまるで別世界だ。

名古屋上空を覆っていたスモッグもここにはない。

渋滞が解消して、西日を受けながら埃っぽい道を飛ばすオレに見えていたのはアメリカの西部劇に出てくるような風景だった。

だいぶ疲れている。
あれは幻か。
忙しない連中といがみ合うのはもうこれくらいにして後は穏やかに目的地を目指そう。

今夜厄介になる友と家族には大津で連絡を入れる。
この旅は本当にタフなものになった。
これがしたかっんだ。

でもここに寄らなきゃこんな気持ちになれなかったかもしれない。
さあ、行こうか。

17:42 琵琶湖-近江大橋
美しい。。
そして疲れた。

19:35 南茨木駅
着いたよ。

迎えにくる友を待っている。
彼との再会が楽しみだ。

計画通りにはいかなかったけど、タフでいられたことには満足しよう。

確かにオレが走ってきた道は友が暮らす街まで続いていた。
新幹線を使えばこんな手間はいらないが、それでもその気になれば、こうして21時間で彼に会える。

その21時間分の距離を感じるためにオレはずっと1号国道を走ってきたんだ。

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