「車旅日記」1995年5月【26歳、初めてひとりで旅に出た理由】その1-東北道を郡山まで、一般道で日本海、酒田、そして帰京
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最終更新日:2024/06/04
旅話 1995年
車旅日記1995年5月2日
14:20 芝浦某所
連休の中日。
例年通りオレは働いている。
受注には恵まれないけど、気分的にはリラックスしている。
そこのところも例年通りだ。
空はよく晴れている。
確かそんな予報じゃなかった筈だ。
まあ、どうでもいい。
今夜オレは旅立つ。
そして恋人も西国に配属された彼氏を求めて今夜旅立つ。
昨夜の電話は切なかったよ。
オレは予定通りに5月6日に帰ってくるよう彼女に繰り返し懇願した。
彼女は曖昧にぼかしたけど、必ず帰ってくるさ。
ネコのことも心配だろう。
今夜の別れは回避できなかった。
彼女が無事にバスに乗り込むまで家に帰りたくない。
さもなくば21:30に彼女が出発するまで部屋の電話の前で座っていたい。
何かしていないととても持ちこたえられない。
せめて今夜は彼女のことだけを想っていたい。
仕事なんてどうでもいい。
それにこんな日に、こんな日じゃなくてもオレは歓迎されるような存在じゃない。
その証拠にこうしてる今、約束をすっぽかされてこうして時間を潰している。
もう一本煙草に火をつけたら次の場所に向かおう。
今夜、彼女が去った後の東京でオレは計画のない旅に流す音楽を整理して、遊びにきている兄貴夫婦とかわいい姪っ子の顔を見たら旅立つ。
北へ向かうんだよ。
17:40 都内築地某所
連休前最後の仕事は人を待つことっていう訳だ。
彼はきっとミーティングでも重ねているんだろう。
人の気も知らずいい気なもんだ。
このオレはと言えば往年の喫煙量を取り戻して、彼女を想う他は髪型を気にしながら過ごしている。
一昔前オレはずっとこんな顔をしていた。
そしてこの顔を気に入っていたけど今は駄目だな。
自分の顔に対して見方が変わったのか。
よく見りゃあの頃より少し老けてる。
時の流れを肯定していきたいと思っているけど、淋しい話だ。
とにかく連休中に床屋を予約しよう。
それにしてもポケベルが鳴らない。
お互い歩み寄るまで気づかなかったけど、横断歩道ですれ違った時の彼女はとても素敵だった。
迎えに行くという高校生たちにまで嫉妬したよ。
そんな彼女が会いにいく西国に行っちまった彼氏は、彼女をよく泣かすろくでなしらしい。
そんなヤツを求める彼女の情熱を冷ますことができず、止められず、悶々とする以外に他に何ができる。
あれこれと今までに見たこともない情景が頭を過るんだ。
その中の特別悲しいのを消し去る作業に忙しい。
ここのとこはそんな日常だ。
18:30に来いってさ。
まったくいい気なもんだ。
さっきから外を家路を辿る人の流れが続いている。
街はネオンを灯しだす。
たいていはその灯に惑わされずに黙ってあたたかい家に帰っていく。
彼女にも言ったんだ。
そっちじゃない。
こっちだよって。
オレは待ってるよ。
5月3日
2:00 東北自動車道佐野SAあたり
渋滞中。
みんなこのGWの一日一日を少しでも有意義に使おうと今夜を費やしている。
時間を考えりゃ狂ってる。
周りの協力が必要だけどせめて穏やかに行こう。
東名は順調か?
いずれにしても完璧にはまっちまって当分はシートを倒して横になることはできないな。
ふと見ればいろんなヤツがいる。
面白いね。
人もオレも。
選曲はうまくいってる。
ノってるよ。
幸運なのは彼女がいないことが気にならないことだ。
計画からはすでに外れている。
のんびりいこう。
調子は悪くない。
3:17 東北自動車道都賀西方PAあたり
GWに仕組まれていた罠にはまっている。
阪神大震災にオウム騒ぎ、そしてこの渋滞。
今年はきちがいじみた光景ばかり見てる。
取り敢えず、こんな目に遭って高速料金を請求されるのは不当だと思うのはオレだけじゃない筈だ。
さっきまで憂歌団をかけてて怒鳴るように「スティーリーン」って歌ってたよ。
3:55 東北自動車道鹿沼ICあたり
さすがのオレもうんざりだ。
なあ友よ。この様子じゃ一睡もできずに約束の場所に向かうことになりそうだ。
この状況じゃマトモなことは何も考えられない。
何だか朦朧としてきたじゃねえか。
ところで隣のアンタ。
アンタ一体どこまで行くんだい?
5:53 東北自動車道 安積PA
友よ、どうにか着いたよ。
ここに来るまでずっと狂った祭が続いていたよ。
いくつものSA、PAを通り抜け、このタフなレースを途中棄権する連中を多く見てきた。
ただ本能に急かされたかのように苦しい道をきた。
何だよ。
爽やかな朝じゃないか。
日が上り、ようやく眠ることができる。
出発から6時間30分か。
あ~あだ。
恋人よ。
今頃はどのあたりだい?
こんな時間にアレだけど、おやすみっ
9:10 東北自動車道 安積PA
おはよう。
路上で起きるのはこんな気分か。
冴えないな。
でも旅は始まってる。
さあ初日だ。
約束の場所に向かおう。
音楽はブルースがいいな。
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