*

「鉄旅日記」2015年春【名鉄電車2DAYフリーきっぷで行く、中京旅】最終日その1(岩倉-東京)-岩倉、御嵩、犬山、新鵜沼、鵜沼、名電各務原、各務ヶ原、新那加、那珂、名鉄岐阜(名鉄犬山線/名鉄広見線/名鉄各務原線)

公開日: : 最終更新日:2023/06/20 旅話, 旅話 2015年

鉄旅日記2015年3月8日その1・・・岩倉駅、御嵩駅、犬山駅、新鵜沼駅、鵜沼駅、名電各務原駅、各務ヶ原駅、新那加駅、那珂駅、名鉄岐阜駅(名鉄犬山線/名鉄広見線/名鉄各務原線)
2015・3・8 5:41 岩倉(いわくら)駅(名鉄犬山線 愛知県)
岩倉は山内一豊の生誕地で、二つの城跡と五条川の桜並木を名所として並べている。

織田信長による尾張統一戦に岩倉織田氏というのが登場する。
山内一豊の父がその家老を務めていたわけだが、やがて信長によって滅ぼされ、岩倉は歴史から身を隠すことになる。

知人で犬山出身のNさんの話じゃ、現在の岩倉は危険な街で、暴力団による発砲事件が数回ニュースになったらしい。

駅前は東西とも小ぶりなロータリーができていて、西口の方にチェーン居酒屋が張りついているだけの面白みのない街で、とても暴力団抗争の原因になるとは思えないが、かつての織田氏による身内抗争のように、生死に発展する争いというものは、一般的見地からは理解を超えた複雑な事情を有するものなのかもしれない。

まだ暗い早朝の岩倉駅。
地下の改札へと下りていくと構内放送からやわらかなギターの音色が聞こえる。
駅長の選曲なのだろうか。
とてもいい趣味だ。

昨夜、常滑から乗った特急列車での放送にも同じことが言えるが、名鉄文化は独自の発展形を辿っているようだ。

6:41 御嵩(みたけ)駅(名鉄広見線 岐阜県)
終着駅は近かった。

犬山から新可児行に乗り換える。
さらに新可児から御嵩までという二つの区間に分かれる名鉄広見線。

新可児駅は線路の行き止まりに駅舎があって、3年前の夏にJR可児駅で降りた際に名鉄の終着駅があることに驚いた過去を持つが、終着駅ではなかったわけだ。

そしてその新可児から御嵩行きに乗り込んだのはただひとりオレのみ。
廃止が検討されている区間だとのちに知る。

駅は中山道49番目の宿場町の中に放り込まれたように見事に町と同化していた。
駅横の広場では老人たちが集まってラジオ体操をしている。
鄙びた宿場町だがこの先中山道は山路になり、地図で見る限り一帯は今も人煙稀な様子で、48番目の細久手宿は遠く瑞浪まで戻る。

ここから犬山に戻る。

7:59 犬山(いぬやま)駅(名鉄犬山線/名鉄広見線/名鉄各務原線 愛知県)
御嵩への行き帰りとも明智で降りるかどうか悩んだ。
明智光秀ゆかりの地でもあるし、名鉄2004年問題に先立つ2001年までは明智から分岐する八百津線というのが走っていたという。

名鉄の鉄路延伸への底知れぬ情熱があったことをそこここで知った。
次の犬山遊園からも2008年までモンキーパークモノレール線が運行していた。

得意先のTさんは幼少の頃、一宮のお祖母さんの元に遊びに行った際に連れられてきたことがあるそうだ。
今も愛らしいTさん。
当時の彼女を想像すると表情が綻ぶ。

そしてここ犬山はもうじきにお別れを言わなきゃならないNさんが生まれた街。
この旅の計画当初から彼女の事は頭にあった。
3月13日に手土産を持って会いにいくことを考えている。

街を見ておこうと木曽川へと下っていくと左手に古い町並みが散見される。
堀端で国宝犬山城への思いを断ちがたく左に折れ、お城の開館には早すぎて城門前で引き返し、観光街を早足で抜け、ついには走りだして予定の列車に間に合わせた。

古くて美しい街との短い出会いだった。
犬山城は車窓からよく見えた。

犬山城への道






8:14 新鵜沼(しんうぬま)駅(名鉄各務原線 岐阜県)
どこからかハーモニカの音色が聞こえた鵜沼駅。
あたりの寛やかな景観にとてもよく調和していた。

駅は変わっていた。
まるで美術館だ。
名鉄駅とをつなぐ空中回廊ができていて、その往復を終えられる程度の時間しかとれなかった鵜沼への再訪。
犬山城がよく見え、岐阜方面へ伸びる線路の果てには雪をかぶった伊吹山が神々しい姿を見せている。

犬山橋へとつながる27号県道に接している新鵜沼駅には往来が見られたが、かつて立ち寄った鵜沼駅とはもしかしたら新鵜沼駅かもしれないと思い始め、おそらくそれが事実であろうと感じている。

日本ラインに目を見張り、宿場の風情を嗅ぎ、駅に寄りはしたが往来の迷惑になってはいけないとすぐに離れた20代の車旅。
駅に寄ることに喜びは感じていたが、たまたま立ち寄ったのが駅であれば幸運だと思う程度で、今のような鉄道旅など思いもよらぬ頃だった。

鵜沼(うぬま)駅(高山本線 岐阜県)にて

8:31 名電各務原(めいでんかがみがはら)駅(名鉄各務原線 岐阜県)
各務ヶ原駅はまるで潰れたパチンコ屋みたいで、ある意味圧倒された。
錆びの入り具合から廃墟となって相応しい年月を読み取れる代物だったが、実は潰れちまったパチンコ屋などではなく、高山本線の現役駅舎としての機能を持たされていることに感動した。

ホームに出ようとするとどこからか犬を連れた女性が現れて、オレの後に続き跨線橋を渡っていく。
ホームから見えた愛宕山をケータイに残して駅を離れた。
この街ではあの駅の記憶さえあればいい。

駅前を走るのは21号国道。
かつて2度この道を通って琵琶湖へ出たことを思い出している。

各務ヶ原駅(高山本線 岐阜県)にて

8:56 新那加(しんなか)駅(名鉄各務原線 岐阜県)
市役所前、市民公園とまるで各務原市内循環バスみたいな駅名が続いて、JR駅と交わるここで降りた。
通りの先に往来が見える。
青空の下で映える街が見えた。
ただ、そこまでを往復する時間は用意していない。

那加駅は新しく簡素な造りだった。
やがてあの各務ヶ原駅もあんなふうに姿を変えてしまうのだろうか。
賛否を問う資格はこの街に縁を持たないオレにはない。

しかしこうして今年も春がきた。

世界は荒れ、テロリストが国家樹立を謳い、10歳の少女が本人の意志とは関わりなく市場を修羅場へと導く役目を負わされ、パリ市民の表情が恐怖で歪んだ冬を過ごした。
人類の今後に対して希望を持ちづらい冬は取り分け寒く感じた。

不安は解消されることはなく、むしろ増幅の危険性すら感じられる世界だが、ここでこうして春の訪れを喜べる気持ちでいられることを幸福と思う。

那加(なか)駅(高山本線 岐阜県)にて

名鉄岐阜(めいてつぎふ)駅(名鉄本線/名鉄各務原線 岐阜県)にて

関連記事

「鉄旅日記」2009年秋【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】2日目(新山口-大分)その1-新山口、宇部、居能、雀田、長門本山、小野田、厚狭、新下関、下関、門司、小倉(山陽本線/宇部線/小野田線/長門本山支線/山陽本線/鹿児島本線)

鉄旅日記2009年9月19日・・・新山口駅、宇部駅、居能駅、雀田駅、長門本山駅、小野田駅、厚狭駅、新

記事を読む

「鉄旅日記」2007年如月【初日天王寺、2日目奈良。宿泊地だけを決めて、心のままに移動した記録でございます。】最終日(奈良-東京)-奈良、亀山、桑名、弥冨、富士、沼津(関西本線/東海道本線)

鉄旅日記2007年2月12日・・・奈良駅、亀山駅、桑名駅、弥冨駅、富士駅、沼津駅(関西本線/東海道本

記事を読む

「鉄旅日記」2018年師走【伊勢のいくつもの終着駅に降りまして、神島で2018年最後の満月を眺めたのでございます。】2日目(津-松阪-伊勢奥津-鳥羽-神島)その1-津、阿漕、松阪、家城、伊勢奥津(紀勢本線/名松線)

鉄旅日記2018年12月23日・・・津駅、阿漕駅、松阪駅、家城駅、伊勢奥津駅(紀勢本線/名松線)

記事を読む

「鉄旅日記」2018年秋【「JR東海&16私鉄乗り鉄☆たびきっぷ」でめぐる東海旅】初日(東京-岳南江尾-豊橋-三河田原-岡崎-尾張瀬戸-勝川-枇杷島-桑名)その2-吉原、岳南江尾、本吉原、吉原本町、吉原、富士川、新蒲原、西焼津、新豊橋、三河田原(岳南電車岳南線/東海道本線/豊橋鉄道渥美線)

鉄旅日記2018年9月15日・・・吉原駅、岳南江尾駅、本吉原駅、吉原本町駅、富士川駅、新蒲原駅、西焼

記事を読む

「鉄旅日記」2008年初夏【まほろばの路から紀州へ。紀伊半島で過ごした短い夏の記憶でございます。】最終日(松阪-東京)-松阪、鳥羽、伊勢市、宇治山田、亀山、名古屋、豊橋、浜松、熱海(近鉄山田線/参宮線/紀勢本線/関西本線/東海道本線)

鉄旅日記2008年7月21日・・・松阪駅、鳥羽駅、伊勢市駅、宇治山田駅、亀山駅、名古屋駅、豊橋駅、浜

記事を読む

「鉄旅日記」2019年師走【由利高原鉄道鳥海山ろく線に乗りにいきました。初冬の日本海は荒々しく、美しゅうございました。】初日(東京-酒田)その2‐新前橋、水上、長岡(上越線)

鉄旅日記2019年12月7日・・・新前橋駅、水上駅、長岡駅(上越線) 7:24 新前橋(しんまえば

記事を読む

「鉄旅日記」2019年弥生Part.1【和歌山電鐵に乗るために、青春18きっぷで紀伊半島一周を思い立ったのでございます。】初日(東京-紀伊田辺)その2-滝原、三野瀬、尾鷲、宇久井、田並(紀勢本線)

鉄旅日記2019年3月2日・・・滝原駅、三野瀬駅、尾鷲駅、宇久井駅、田並駅(紀勢本線) 14:14

記事を読む

「鉄旅日記」2016年春【東日本大震災被災地へ】最終日(水沢-東京)その2-気仙沼、一ノ関、小牛田、大河原、福島、安積永盛、久喜(大船渡線、東北本線)

鉄旅日記2016年3月6日その2・・・気仙沼駅、一ノ関駅、小牛田駅、大河原駅、福島駅、安積永盛駅、久

記事を読む

「鉄旅日記」2011年秋【再びみちのくひとり旅】初日(東京-長井)-保谷、宮内、柏崎、小島谷、内野、関屋、早通、豊栄、佐々木、坂町、小国、羽前小松、今泉、長井(西武池袋線/上越線/信越本線/越後線/白新線/米坂線/山形鉄道)

鉄旅日記2011年11月5日・・・保谷駅、宮内駅、柏崎駅、小島谷駅、内野駅、関屋駅、早通駅、豊栄駅、

記事を読む

「鉄旅日記」2018年エイプリルフール【8年振りに金町に帰ってまいりました。青春18きっぷはまだ3日分残っております。呼んでくれたのは会津でございました。】その2-猪苗代、磐梯町、安子ヶ島、磐梯熱海、郡山(磐越西線)

鉄旅日記2018年4月1日・・・猪苗代駅、磐梯町駅、安子ヶ島駅、磐梯熱海駅、郡山駅(磐越西線) 1

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】初日(東京-高山)その5‐飛騨金山、下呂、禅昌寺、飛騨萩原、上呂(高山本線)

鉄旅日記2020年3月20日・・・飛騨金山駅、下呂駅、禅昌寺駅、飛騨萩

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】初日(東京-高山)その4‐多治見、坂祝、美濃太田(太多線/高山本線)

鉄旅日記2020年3月20日・・・多治見駅、坂祝駅、美濃太田駅(太多線

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】初日(東京-高山)その3‐上諏訪、塩尻、洗馬、中津川(中央本線)

鉄旅日記2020年3月20日・・・上諏訪駅、塩尻駅、洗馬駅、中津川駅(

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】初日(東京-高山)その2‐甲府、日野春、長坂、青柳(中央本線)

鉄旅日記2020年3月20日・・・甲府駅、日野春駅、長坂駅、青柳駅(中

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】初日(東京-高山)その1‐金町、東京、高尾、藤野(常磐線/中央本線)

鉄旅日記2020年3月20日・・・金町駅、東京駅、高尾駅、藤野駅(常磐

→もっと見る

    PAGE TOP ↑